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シナのチベット併合を直視せよ

『月刊日本』2010年10月号 羅針盤 2010年9月22日
100924.jpg この八月は例年の戦争関係だけでなく、日韓併合百周年でもあり、歴史問題が異常に盛り上がった。その頂点が菅首相による、併合に関する談話の公表であった。政権の性格からしても、かねて予想されたことではあったが、条約の締結日の二十二日や発効日の二十九日より以前に、八月十日にそれは公表された。
 これに対して保守派の人々は、その影響を極めて危惧していたが、現在のところそれほどの明確な韓国側の反応は見られず、予想外に冷静に受け取られているようである。とすれば、一体何故であろうか。私の理解するところでは、それは歴史問題という情報戦において、日本の敗北が定着したと言う事実が、成立してしまっているからであろう。そしてさらに韓国の人々が、日本の政治的混迷と経済の低迷振りにあきれ果て、他方自分たちの経済的のみならず政治的実力にも、自信を持ち始めたからであろう。

 経済では、半導体や薄型テレビで、日本に対して圧倒的な差をつけ、更に太陽電池やリチウムイオン電池でも、日本を急追しようとしている。ごく最近では、南米のボリビアにおける、リチウム資源の獲得にも成功している。また中東のアブダビへの、原子力発電所の輸出にも成功した。これらは、日本の無能ぶりに比べて、単に経済力だけでなく、韓国の政治力・外交力の成長を、端的に物語るものである。
 ところで菅首相の談話では、最初のパラグラフ中で「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられました」と述べている。私はこうゆう言辞を目にすると、自然にチベット問題を想起してしまう。それは私自身が、長年チベット問題に関心を持ってきたからであるが、もう少し世間一般にも、両者を関連させて考える頭の働きがあるべきだと、強く感じている。
 政治的・軍事的な力によって植民地支配をされ、国と文化を奪われて、民族の誇りを深く傷つけられたと言うのなら、それはチベットの運命にものの見事に当てはまる。韓国や日本の一部の人間は、日韓併合条約は軍事力を背景に無理やり押し付けられたものだから、根本的に違法なのだと主張しているが、もしそうだと仮定するならば、それはチベットを併合した一九五一年の十七条協定と全く同一である。
 日本による韓国併合と、中共によるチベット併合では、相違する点ももちろんある。まずその時期である。日本の韓国併合は一九一〇年であり、中共のチベット併合は四十一年後の一九五一年である。僅かに四十一年の相違であるが、この間に世界の歴史は大きく進歩した。一九一〇年は、帝国主義時代の最末期であり、その後間もなく第一次世界大戦が起きて、その結果世界史のルールが大きく変わったのである。大戦後の秩序の確立の際に、民族自決・民族独立の原則が適用されて、東ヨーロッパに八つの独立国が一挙に誕生した。ただしそれはヨーロッパだけことで、アジア・アフリカには適用されなかった。その矛盾がようやく解消されたのが、第二次世界後の植民地の独立であるのは言うまでもない。この独立国家が続々と誕生する民族独立の時代の真っ只中で、歴史の流れに全く逆行して、チベットはシナ人に侵略・併合されてしまったのである。
 ただし最大の相違点は、その後の結果であると言わなければならない。日本の朝鮮統治は三十五年間続いて、一九四五年に終わった。これは日本の敗戦によるものだが、戦勝国の大英帝国も崩壊したのだから、敗戦の為というより、歴史の進歩の必然的な結果だと考えるべきである。一方、シナ人によるチベットへの植民地支配は、相変わらず続いている。すでに約六十年が経過して、日本の朝鮮統治の期間を遥かに超えており、このままで何時まで続くか分からない。すなわち、日本の朝鮮統治はあくまでも過去の話なのに対して、シナ人によるチベット支配は、紛れも無い現実なのである。
 過去と現実とどちらが大事かといえば、現実が大事に決まっているだろう。しかし菅首相に代表される日本人は、日本の過去を大仰に反省しながら、チベットの深刻きわまる現実には目をつぶるのである。実はこれでは、「私はちっとも反省していません」と言っているのと同じである。かつてドイツのワイツゼッカー大統領は、「過去に目を閉ざすものは、現在にも盲目となる」と言って、朝日新聞などはドイツ人の良心の表われだと誉めそやした。これを逆から言えば、「現在に盲目なものは、過去にも目をとざしている」ということになる。日本による朝鮮統治の過去を、本気で反省しているのであれば、チベットの現実に黙っていられるはずがないのである。
 ついでに言えば、中共の完全なる属国となっている北朝鮮はともかく、日本に対して自信を付けて来たらしい韓国は、現実に存在する侵略であり植民地支配であるチベット問題に、是非とも積極的な関心を向けるべきである。国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた人間の気持ちを、最も良く理解できるはずなのだから。

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