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尖閣事件に関する安倍元首相の極めて優れた発言

  • Posted by: 中の人
  • 2010年10月28日 19:22
  • 時評
101028.jpg 安倍晋三元首相は10月中旬に訪米して、尖閣事件についてアメリカの政府や議会の関係者と会談し、講演会も行った。10月25日の産経新聞、「尖閣事件批判で存在感 復権うかがう安倍元首相」と題する記事によると、14日から20日まで、自民党の谷垣総裁の特使として、ワシントン訪問を行ったのだという。主として新聞のウェッブ版によると、安倍元首相はワシントンで15日に講演を行い、同日に上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会のウェッブ委員長及び国務省のスタインバーグ副長官と会談し、18日にはフロイ国防次官とも会談している。なお安倍元首相には、元外務副大臣で現在の「影の内閣」の外務担当である、自民党の小野寺五典氏が同行したらしい。

 朝日新聞の16日のウェッブ版の伊藤宏記者の記事によると、ウェッブ委員長は、「尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で日本政府が船長を釈放したことについて『間違った判断だった』と指摘。中国の東シナ海や南シナ海での行動に強い懸念を示した」とある。
 スタインバーグ副長官は、「尖閣諸島で日中間に紛争が発生した場合、『日米安保条約が適用される。日米が共同してこの問題にあたる』と述べた」という。この点については、同じ朝日のウェブ版でも、時事通信によるものでは、「同副長官は『(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が適用される』と語った」とより明確になっている。なお朝日本紙には、16日に伊藤記者による記事として、ウェッブ委員長との会談は載っているが、スタインバーグ副長官との会談は載っていない。
 読売のウェッブ版19日の小川聡記者の記事によると、国防次官との会談では小野寺氏の質問に答える形で、フロイ次官は「尖閣諸島が中国に軍事的に占領された場合でも、『(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約5条の規定により、日本をサポートする』と述べた」という。国務副長官と同じことを言っているわけである。
 政府と議会の要人から、かなり明確な発言を引き出したのであるから、アメリカが絶対に信用できるかはともかくとして、野党外交としてはかなりの成果を挙げたのではないのか。ただし私が安倍元首相の訪米の功績と考えるのは、要人との会談ではなくて講演のほうである。安倍氏は15日に、シンクタンクであるハドソン研究所主催の講演会で、尖閣事件に関連して、かなり内容のある講演を行ったようである。
 産経新聞ウェブ版16日の佐々木類記者の記事は、これを比較的詳しく紹介している。安倍氏はまず日本政府を、「中国の蛮行に対して日本は船長を解放して間違ったメッセージを送ってしまった」と批判し、「領土を守るという断固たる姿勢を示すため、中国に対し『集団的自衛権の行使を認め、(海外への武器輸出を原則禁じている)政府の武器輸出三原則の見直しを進めてIT産業を活性化させる必要がある』と語り、中共の共産党に対して、「経済的不満が国民の偏狭的な愛国心を刺激して怒りの矛先が指導部に向かうことを恐れている」と分析し、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配という価値を尊重することが経済成長につながることを理解させなければいけない」と述べたという。
 内容的には、なかなか立派なことを言っており、先の25日の産経新聞の記事では、講演の様子は「ワシントンのケーブルテレビで何度も取り上げられ、米政府への反響は大きかったという」とある。しかし実を言うと、ハドソン研究所での安倍氏の講演に関する、産経の佐々木記者による紹介には、私が安倍氏の講演の最も大切な部分と考えることが、全く抜け落ちているのである。日本のマスコミは、報道センスが余りにも鈍いためか、中共に遠慮しているためか、安倍氏の講演を殆ど報道しなかったし、報道した場合でも極めて不完全だったのである。しかしそれは意外なところから明らかになった。
 共同通信の報道するところを、重要なので以下全文紹介する。
 「中国外務省の馬朝旭報道局長は19日の定例記者会見で、安倍晋三元首相が米国で行った演説で中国をナチスドイツと同列に論じたとの質問に対し『荒唐無稽の極みだ』と述べ、批判した。馬局長は『(中国は)平和発展路線を堅持』している』と主張した。安倍氏は15日、米ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所で講演し、東シナ海などでの中国海軍の活動拡大に言及。中国の軍事戦略について『国力が国境や排他的経済水域をきめるという立場であり、中国が経済成長を続ける限り、活動可能な地理的範囲が広がるという極めて危険な論理だ。これを聞いて、かつてのドイツにおける「レーベンスラウム(生存圏)」という考え方を思い起こす人もいるかもしれない』と述べた」
 すなわち安倍氏は講演で、中共の現実はナチスドイツと同じだと断言したのである。これは私が知る限りにおいて、今回の尖閣事件について大量に出された見解の中で、最も優れたものである。中共が最近とみに主張する「核心的利益」の範囲・空間とは、安倍氏の言うように、ナチスドイツのレーベンスラウムとそっくりである。そもそもナチスドイツの犯罪と言えば、侵略とユダヤ人虐殺であるが、中共は紛れも無く「侵略現行犯国家」であるし、私が常に指摘しているように、シナ人以外の民族を抹殺する政策を推進する、「民族虐殺国家」である。現在の世界において、中共ほどナチスドイツに類似する国家は存在しない。安倍氏は四年前に政権を担ったが、外交において完全に失敗し、現在の「米中二重隷属体制」を確立させてしまった最大の責任者であるが、この発言自体はまことに正しい。
 ところがこの安倍元首相の発言が、日本では殆ど知られていない。私が気づいた範囲のことであるが、新聞本紙では産経を含めて全く報道しなかった。ウェッブ版では、産経と東京が載せていたが、それは私が引用した共同電をそのまま使ったものである。先に触れたように、産経は佐々木類記者が、講演を取材しているのだが、ナチス問題については全く言及していない。これでは産経すらも、中共に対する精神的隷属状態にあることの、明らかな証拠であると言わざるを得ない。
 そして中共のこの現実を、世界中が黙認していることこそ、実は最大の問題なのである。自由の国・アメリカも、人権の国・フランスも、その他の先進国もそうであるし、ナチス犯罪の当事者であるドイツや、今でも被害を売り物にするユダヤ人までが、現実のナチズム国家・中共を野放しにしているのである。これこそ現在の世界に罷り通る、とてつもない不条理であり、現代世界の腐敗・堕落の根源である。

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