- 2010年11月13日 11:40
- 時評
しかし、最近は朝日新聞にもそれだけの元気はないようである。それは世界全体の趨勢と関係があるだろう。すなわち例のアメリカにおける2001年の9.11テロ以来、テロの撲滅が、世界で解決すべき最重要課題に位置づけられるようになった。それを批判することは、困難になったからである。ただしこのテロ撲滅が世界の重要課題とされたことには、私は極めて大きな不信感を持っている。それはテロ撲滅がクローズアップされる代わりに、世界の歴史の流れから考えて、解決しなければならない最大の課題である、民族独立問題が、不当に無視されるようになったことである。
つまり中共やロシアの内部の民族独立運動を、ことさらにテロと同一視することによって、それを危険視すらするようになってしまったのである。これによって、アメリカは、共産主義のままの中共とも、一応民主化されたことになっているが、急速にソ連に回帰しているロシアとも、変に仲良くなってしまったのが、この10年間の世界の歴史の暗黒的な潮流だと言える。この重要な動向は、決して自然に起こったものではなく、意図的に計画され遂行されているものであろう。
テロの撲滅が叫ばれるようになってから、テロ事件は実際に減少したのであろうか。どうもそのようにはとても見えない。誰かがキチンと計算してもらいたいものであるが、以前より却って増加しているのではないのか。一番印象的なのは、自爆テロの増加である。日本の戦争中の特攻と同性質の自爆テロを、警戒され難いために、女性がやるようになってきている。結局、この世の中から戦争はなくならないし、核兵器もなくならない。ましてそれよりずっと簡略なテロが無くなるわけが無いのである。したがってテロ撲滅を叫んでいる世界の指導者は、テロを無くそうと本気で考えていないだろう。テロ撲滅を口実として、それだけ強力に世界を管理できれば良いのである。
世界のことはともかく、APECがらみの日本のテロ警備であるが、想定されているテロリストはいかなる人物なのであろうか。日本の極左勢力にそれだけの力が残っているのか。海外からテロリストがやってくるのか。そしてそれはイスラムなのか。警察当局が警備をするからには、当然テロリストの人物像を想定しているであろうが、はなはだ興味深いことである。ところで今回のテロ警備の目的は、そもそも何であろうか。もちろんそれはテロによって、人間が損傷されることを防ぐためであろう。ただしもっと厳密にその目的を考えれば、海外の要人が危害を蒙ったら、日本の国家的威信が傷つくことを恐れているのだろう。そのために多額の経費をかけ、大量の警察か動員されて、大規模警備を実施しているわけである。
しかし日本の国家としての威信は、最近の尖閣事件やロシア大統領の北方領土上陸で、ずたずたに傷ついているのではないのか。すでにして日本国家の面目は、丸潰れになっているのである。鈍感な日本人がそれを自覚していないだけである。不謹慎な言い方だと言われるかもしれないが、テロ事件が勃発して世界の要人が多少負傷したところで、今更どうと言うことはないのではないか。
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