- 2010年11月 7日 22:07
- 時評
ただしフランスのサルコジ大統領が、人権問題に関連して中共に屈服したのは、今回が初めてではないのである。今から僅かに二年まえの事なのに、多くの人間が忘れているようであるが、北京オリンピックの聖火リレーに関して、中共が世界中から抗議を受けたことがあった。そのために「人権の国フランス」の大統領であるサルコジは、オリンピック開会式への出席をボイコットする姿勢を見せ、フランスでの聖火リレーへの抗議も激しかった。それに対して、今回の尖閣事件で起きた反日デモのような反フランスデモが、中共の各地で勃発した。その標的となったのは、チベットを支援しているとされた、フランス資本のスーパー・カルフールであり、大きなトラックを何台も店の前に乗り付けて封鎖するという、凄まじい暴挙が平然と行われた。これを警察が全く規制しなかったのであるから、完全な官製デモであって、中共の国家権力そのものが、フランスを暴力によって恐喝したわけである。
その結果はどうなったといえば、フランスはその恐喝に完全に屈服して、サルコジ大統領はオリンピック開会式に主席した。これをフランスの有力紙ル・モンドは、「カノッサのサルコジ」と題する社説で、中世に神聖ローマ帝国皇帝がローマ法王に屈服した、史上有名な「カノッサの屈辱」になぞらえた。しかしこのままではまずいと思ったサルコジ大統領は、8月にはキャンセルしたダライ・ラマ法王と会見を、その年の年末に復活して、チベット独立問題で中共は静に対応すべきだと発言した。これでまた中仏関係は険悪化したが、「09年にロンドンで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、サルコジ大統領は『チベットは中国の不可分の領土』という中国の立場を確認。今年4月の訪中では、中国を『戦略的パートナー』と位置づけていた」(毎日11月4日ウェブ版)のだという。つまり今回の会談は、最終的な手打ちといえるものであって、サルコジ大統領が人権問題など持ち出せるわけがないのである。
先進国を自認する欧米諸国は、いまや中共に対して完璧にエコノミックアニマルに成り下がってしまった。変われば変わるものである。1989年の天安門事件で大量虐殺を行った中共政権に対して、欧米諸国は厳しく批判した。とくにフランスは天安門事件に関係した亡命シナ人を多く受け入れ、その年はちょうどフランス革命200周年に当たっていたのだが、革命記念日のパレードにそのシナ人を参加させ行進させた。天安門事件のあとでは、先進国の中では日本がいち早く、中共との関係修復に動いた。その時に日本をエコノミックアニマルと批判したのが、欧米諸国であった。しかし欧米諸国は日本の天皇陛下の御訪中を隠れ蓑にして、その後中共との関係をなし崩し的に修復して行った。これは中共の外務大臣を務めた人物が、回顧録で証言していることである。
すなわち現在では、中共に対する融和というよりも屈服状況は、フランスだけでなく欧米先進諸国に広く見られるようになった。もちろんアメリカもその中に入る。アメリカのブッシュ大統領は、一昨年の北京オリンピックの際に、チベット問題があれだけ沸騰したにも拘わらず、中共対する批判はせずに開会式に出席したのである。したがって今回ノーベル平和賞の授与問題があっても、中共の人権状況に対する世界の批判は、殆ど盛り上がることはないであろう。尖閣事件によって、自民党時代も含めて日本の政治家がいかに劣化しているかが、実に明瞭になったのだが、世界の政治家も驚くほど劣化してしまっているのである。間抜けな日本人は欧米諸国に対して、根拠のない信頼を抱いているが、これが世界の現実の姿である。こんな堕落した政治家に期待することは全くできない。しかしこのままでは、悪の帝国・中共がいたずらに栄える、暗黒の世の中になってしまう。この腐りきった世界を変革するために、日本の若者は積極的に戦ってもらいたい。悪の帝国の格好の獲物・標的となっているのは、ほかならぬ我が日本なのであるから。
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