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人権問題で中共を増長させてしまった責任は欧米先進国にある

  • Posted by: 中の人
  • 2010年12月21日 19:49
  • 時評
101221.jpg 前稿でノーベル平和賞の授賞式への、中共政府による欠席強要が、東南アジア諸国には効果があったことを取り上げたが、更にこの問題の今後への影響について、もう少し考えてみたい。それについては12月11日の朝日新聞の伊東和貴記者による記事が、二つの見方を専門家に語らせている。それは以下のようである。
 伊東記者はまず、欠席が約三分の一に及んだ、「割れた国際社会の対応は、中国の勝利と言えるのか」と問題を提起して、次のように相互に異なる二つの見解を紹介する。「オスロ国際平和研究所のハープウィケン所長は『中国を筆頭に、人権という西側諸国の価値観に挑戦するイデオロギー圏が現れてきたのではないか』と分析。一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチの担当者は言う。『中国の強引な反発の仕方は国際社会でのイメージをさらに悪くした。長期的に見れば、中国が失ったものは少なくないはずだ』」。簡単に言えば、前者が悲観的な見方で、後者が楽観的な見方になるだろう。私は、完全に同一ではないが、前者と基本的に同じ見方である。

 まず今回の中共による欠席強要に対してさえ、約三分の一の同調者がいたのである。授賞式への招待状が出されたのは、オスロに大使館を有する65カ国に過ぎないから、世界には外に百数十カ国がある。それには、例えばアフリカの諸国などの後進国が多いに違いない。中共は極めて昔から、数の多い後進諸国を利用することに熱心であった。しかもそれが顕著な成功を納めている。近年で言えば、日本の国際連合常任理事国入りを阻止したし、今年で言えば、ワシントン条約会議のクロマグロ漁問題で、欧米が求めた規制案を葬り去った。当時の日本の農水大臣は無邪気に喜んでいたが、あれは完全に中共の外交力によるものである。
 しかもこれら後進国と中共とは、その国家としての体質が似通っている。後進諸国は、純然たる共産主義ではないとしても、自由と人権が制限された、独裁的政権が支配する国が多い。しかもそれは同時に、金銭的にも腐敗していることを意味している。類は友を呼ぶと言うから、似たもの同士が仲良くなるのは当然であろう。しかも、自由と人権を制限した強権支配を行いながら、急速な経済成長に成功した中共は、後進国の支配者にとって、まことに好ましい手本に見えるだろう。これを「中国モデル」と言うらしい。したがって、ノーベル平和賞の授賞式への出席の可否が、全世界の規模で明らかにされたとしたら、欠席のほうがずっと多かった可能性が高い。
 つまり、今後人権問題を始めとする中共の横暴に対して、世界が厳しく対応することは、ますます考え難い状況になってゆくであろう。ただし、オスロ国際平和研究所所長の見解も、ずいぶんと甘い考え方であると言わざるを得ない。それは、ここまで中共を傲慢に増長させてしまった責任は、欧米先進諸国にあることを、全く見逃しているからである。約20年前、ソ連が消滅した時点で、冷戦体制は崩壊したと錯覚し、中共という共産主義国家を温存させてしまった。中共が経済を急成長させ、その成果を投入して軍事大国に成長して傲慢に振舞い出すと、欧米先進国の中共批判は、どんどん腰砕けになっていった。それが極めて顕著になったのが、この二三年ほどの世界の動向である。
 08年のチベット問題、09年のウイグル問題という、深刻な民族問題が勃発したにもかかわらず、欧米先進国は何もできなかった。最近の動きでは、本ブログでも何度か取り上げたが、中共からの大量買い付けと言う経済の餌に、ドイツもフランスもイギリスも、だらしなく喰らいついて、中共の人権問題に目をつぶった。つまり、「人権という西側諸国の価値観に挑戦するイデオロギー圏」が形成されていると言うよりも、「人権という西側諸国の価値観」そのものが、欧米先進国自身によって、ないがしろにされているのである。これこそが、現在の人権の危機の根本問題である。
 このような状況が、簡単に改善されるとは、とても考えられない。欧米先進国は、中共の脅威を直接的に蒙る心配はないのかも知れないが、全く置かれている立場が異なる我が日本は、主体的に中共の毒牙から免れる道を、真剣に探求しなければならない。ただし現在の日本には、そのような問題意識もそれに対応した行動も、全く見られないが。

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