- 2011年3月16日 10:27
- 時評
ジャスミン革命は、中共の人々がアラブの民主化にならって、日曜日ごとのデモを、インターネットで呼びかけていたものである。それは2月20日に始まり、同27日、3月6日・13日と、現在まで4回に及んでいる。デモを計画した都市の数は、第一回が13都市、第二回が20数都市、第三回が約40都市、第四回が海外も含めて約50都市と、順次増えている。しかし中共当局の警備は厳重で、回を追うごとに厳しさを増しており、徹底的に封じ込められているのが現実である。
最初のデモでは、日本の新聞も直接取材ができ、上海のデモについて、警察に連行される人物を、特派員が撮影した写真が、産経にも朝日にも掲載されている。これを反省した中共の官憲は、第二回目には海外マスコミを徹底して警戒し、日本のテレビ局のカメラマンを含む少なくとも10人が拘束され、ハンツマン米国大使が抗議を行った。その後はますます警備が徹底され、デモは完全に不発に終わったようである。
日本の中には、この中共の民主化運動に期待する向きも多かったが、それは今の所完全な期待はずれの状態である。ではなぜ中共のジャスミン革命は、不発に終わっているのか。私はこのような事態は、事前にかなり予想できたものであると思う。
その意味で、日本の中共大使である丹羽宇一郎大使の見解も、存外正しいと言えるであろう。帰国中の同大使は、3月1日に自民党の外交部会に出席して、「今の生活を壊してまで政権を倒そうとする情熱、意欲は、中国の今の国民にはない」「ジャスミン革命のようなことは中国では期待されない方がいい」と述べたという。このことに関連するが、デモ企画者側のジャスミン革命の手法にも、本物の緊張感は感じられない。そもそもデモの集合場所を、インターネットで予告すれば、そこを徹底的に警備して弾圧するのは分かりきったことである。
ただしジャスミン革命不発の理由は、とてもそれだけでは説明できない。私には少なくとも、あと二つは考えられる。第一に、そもそも政権打倒が実現した中東諸国などとは、中共の国家権力は比較に成らないほど強大である。毎年10万件に及ぶという暴動やデモを現実に鎮圧してきた、かくかくたる実績があるのであり、チベット人やウイグル人の独立運動を、情け容赦なく弾圧してきたのである。それには公安という警察と、そのために作られた武装警察という専門職があり、天安門事件のようにわざわざ軍隊が出てくる必要はない。そして第二に、欧米諸国の態度がまるで異なっている。中東の反体制運動に対しては、欧米諸国が応援しているが、中共の民主化運動に対しては、全くの及び腰である。天安門事件当時とは、完全に違うのである。
ところで今回のジャスミン革命の不発で、日本に関連して極めて明らかになったことがある。それは昨年の尖閣事件の際に行われた、中共の反日デモの正体であり、明確に日本を脅迫するために企画された完全なる官製デモ、少なくとも当局の公認デモであったことが、見事に証明された。当時政権批判の芽が見えると潰されたから、ある程度は推測されたのだが、今回は最初からの政権批判であり、それは完璧に封殺されたからである。日本人ならこの点をしっかりと認識すべきであるが、それを指摘した言論を私は知らない。
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