- 2011年6月 8日 17:00
- 撃論
『撃論』富国強兵号 vol.1 2011年5月28日
中華人民共和国(以下、中共と略す)は、世界史の流れに全く逆行する、現実の侵略国家である。中共は共産主義国家であるから、共産主義の思想によって、その侵略を行っていると考え易いが、実はそうではない。シナ人は独特の侵略思想・侵略の哲学を有していて、それに基づいて、侵略を実践しているのである。中共が共産主義でなくなって、民主化されたとしても、根本的な侵略国家と言う体質は全く変わらない。しかし、今日の日本では、この極めて重大な事実が、全くと言うほど知られていない。私はこの侵略思想を、「シナ侵略主義」と呼ぶことにしている。 シナ人の侵略思想の中核的な論理・理屈として、民族概念の二重構造がある。中共は56の民族によって構成される、多民族国家であるとされ、この中で90パーセント以上を占めるのが「漢族」すなわちシナ人で、他の「チベット族」などの民族を、一括して「少数民族」と呼んでいる。このことさらに「~族」と称している民族概念は下位の民族概念で、さらにすべての民族を包含する上位の民族概念として、「中華民族」と言う概念が存在する。つまりシナ人だけでなく、チベット人もウイグル人もモンゴル人も、公式的には中華民族すなわち中国人なのである。したがって中共は中華民族として、単一民族国家なのであると言える。この論理によって、チベットも東トルキスタンもシナ人に侵略された。チベット人もウイグル人も中華民族・中国人なのであるから、それらの人々の居住地域も、「中国」の一部になってしまう。
ではこの侵略思想・シナ侵略主義は、何時どのようにして成立したのであろうか。それは一度に出来上がったものではなく、段階を追って発展・成立したものである。孫文の民族主義思想の変遷がそれを示しており、漢字四文字の熟語で表現すれば、「駆除韃虜」⇒「五族共和」⇒「中華民族」の三段階と捉えることができる。つまり孫文の民族に対する考え方、民族観は、二度大きく変化している。本年は清帝国を滅亡させた、シナの辛亥革命からちょうど100年になる記念すべき年であるが、まずこの革命の成功によって、孫文の民族に関する主張は大きく変節した。
革命以前である1906年の『中国同盟会軍政府宣言』では、革命のスローガンを「駆除韃虜、回復中華、建立民国、平均地権」と掲げた。この四か条は、後の三民主義における民族主義・民権主義・民生主義の基となったもので、最初の二つが民族主義に当たる。韃虜とは韃靼人の蔑称であり、韃靼人とは本来モンゴル人のことであるが、この場合は清帝国の支配者である満州人を意味している。つまり駆除韃虜とは、侵略者・征服者である満州人を追い出して、シナ人としての民族独立を回復することであった。
したがって回復中華の「中華」は、シナ人の国家を意味しており、これは現在の公式的な中華の用法と異なることは、充分に注意する必要がある。この中華で表現されているシナ人の伝統的な領土は、おおよそ明帝国の領域と同じで、戦前は「支那本部十八省」と呼ばれていたところであり、現在の中共の領土の三分の一ほどの面積である。その明を満州人が征服し、更に領土を大幅に四倍ほど拡大して、清帝国が成立したわけである。
ところが、1911年の秋に辛亥革命が成功して、翌1912年の正月に中華民国の建国が行われ、孫文は臨時大総統に就任したのだが、その就任宣言の中で、「漢満蒙回蔵の諸地を合して一国となし、漢満蒙回蔵の諸族を合して一人の如からんとす」と言い出すようになった。これが「五族共和」の主張である。つまり漢=シナ人、満=満州人、蒙=モンゴル人、回=ウイグル人など回教徒、蔵=チベット人の五つの民族が、一つの民族のように共同して、中華民国を作ってゆくのだというのである。したがって中華民国の領土は、清帝国の領土をそのまま継承するのであり、各々の民族の独立は決して許されない。現在の中共における民族問題の根本的な淵源は、まさに此処に存在する。
孫文の民族理論はさらに犯罪的に発展してゆく。1921年の『三民主義の具体的方策』では、中華民国の民族問題について、「余の現在考えている調和方法は、漢民族を以って中心となし、満蒙回蔵四族を全部我らに同化せしむると共に」「漢満蒙回蔵の五族の同化を以って一個の中華民族を形成し、一個の民族国家を組織し」と主張した。つまり五つの民族で「中華民族」を形成するのであるが、中心はあくまでもシナ人であって、他の民族はシナ人に同化されるべきであるというのである。
この考え方をあからさまに表現したのが、孫文の最晩年、つまり没年の前年である1924年に行った、三民主義の連続講演(現在、孫文の『三民主義』として出版されているもの)の中の、次の言明である。「では、中国の民族はと言うと、中国民族の総数は四億、その中には、蒙古人が数百万、満州人が百数万、チベット人が数百万、回教徒のトルコ人が百数十万交じっているだけで、外来民族の総数は一千万にすぎず、だから、四億の中国人の大多数は、すべて漢人だと言えます。おなじ血統、おなじ言語文字、おなじ宗教、おなじ風俗習慣を持つ完全な一つの民族なのであります。」
要するにシナ人以外の他の民族は、完全に無視してかまわない存在であって、シナ人に同化吸収されるべきものであり、彼らには生存する権利はないのである。旧ユーゴスラビアでは、国家が解体して内戦が起き、セルビア人による他民族に対する「民族浄化」が発生したとされ、欧米諸国が非難してNATO軍が空爆を行った。シナ人による民族浄化、すなわち民族抹殺は、膨大なシナ人の人口圧力によって、他民族を同化吸収して消滅さようとするものであり、実態的には同じことを目指している。したがってそれは、ナチスのユダヤ人大虐殺とも本質的に同一の行為である。
すなわち、シナ人による侵略の思想は、既に中華民国の時代に立派に形成されていた。ただし中華民国の段階では軍事力が弱体で、本来のシナの領土すら統一できなかったくらいだから、チベットなどへの侵略は実現できなかった。それが第二次大戦後、中華人民共和国が誕生して、巨大な軍事力を手に入れたとき、シナ人としての以前からの野望を遂げて、南モンゴル・東トルキスタン・チベットを、次々と侵略併合して行ったのである。
そして特に重要なのは、このシナ侵略主義の思想は、今後の更なる発展の可能性を秘めていることである。例えば、中共の55の「少数民族」の一つに「朝鮮族」がある。これらの人間は主として旧満州、中共の東北地方に居住しているのであるが、もしも朝鮮半島(韓国と北朝鮮)の朝鮮人も中華民族として認定されれば、朝鮮半島も「中国」の一部になるわけである。このような立場の民族は、中共国内と周辺諸国に沢山存在するから、中華民族概念は、今後シナ人が周辺地域を侵略する場合、極めて有効な凶器になるであろう。
同様な危険性は、実は我が日本にも当てはまることを、ゆめゆめ見逃してはならない。
私は以前から、シナ人による日本侵略の三段階論を主張している。それは、精神侵略・人口侵略・軍事侵略の三段階である。第一段階である精神侵略は、教科書問題・靖国参拝問題などの歴史問題の利用によって、既に完成した。現在進行しているのは、第二段階である人口侵略である。
法務省が毎年発表している外国人登録者数の統計によると、最新の数字である2009年末で、台湾・香港を含む「中国人」人口は68万518人で、国別で最大になっている。日本の外国人人口で長い間トップだったのは、韓国・朝鮮人であったが、2007年に追い抜いた。韓国・朝鮮人が減少しているのに対して、「中国」人人口は急増しているからである。
それは1991年に17万、2001年に34万、2009年に68万であり、ほぼ10年ごとに倍増している。旧来のようなオーバーステイのほか、時おりメディアで報じられる日本人とシナ人の偽装結婚も、入管当局の必死のチェックを巧みにかいくぐり、いまだ公然と行われている。したがって、遠からず100万人の大台を突破するであろう。また韓国・朝鮮人のようには帰化にこだわらないから、帰化人口もかなり存在しているはずである。
この人口侵略の段階は、同時にシナ人による経済侵略の段階でもある。この十数年、GDPが全く成長していない日本に対して、GDP第二位に躍り出た中共による企業買収は、急速に進行するであろう。またシナ人が日本の土地買収に乗り出していることも、最近知られてきた事実である。経済のみならず日本のあらゆる分野に進出しているシナ人の活動振りは、朝日新聞が長期に渡って掲載した、「在日華人」と題する大型記事に、詳しく紹介されていた。注意しなければならないのは、この人口侵略は軍事侵略ではない以上、日米安保条約では全く防げないことである。シナ人は、日米安保の矢弾が利かない人口侵略で極めて順調な攻勢を取りつつ、日米安保崩壊後に訪れる軍事侵略の好機を虎視眈々と見計らっているのである。
では今後、日本の運命はどうなるであろうか。アメリカは絶頂期を過ぎて、衰退期に入っていると考えられる。したがって、世界第二位の軍事大国に成長した中共と、軍事衝突することはありえないであろう。アメリカも膨大な軍事力を維持できなければ、日本列島から撤退せざるを得ない。そうなればシナ人は日本に対して、軍事侵攻を開始するだろう。その時に、侵略を正当化する大義名分として使われるのが、中華民族の論理であることは間違いない。
現在のところ、中共では日本人を少数民族の一つに認定していないが、それは何時でも一方的にできることである。シナ人と文明的には極めて異なるチベット人が、中華民族にさせられているのであるから、漢字漢文・律令制度・シナ仏教・建築工芸など、数多くの文明的要素をシナから輸入した日本人が、中華民族に編入されることは、少しも不思議ではないのである。
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