- 2011年7月25日 23:46
- 月刊日本 羅針盤
『月刊日本』2011年8月号 羅針盤 2011年7月22日
前回の原発に関する文章の末尾で、原発建造を爆発的に推進する中共から、そのうち放射能が偏西風に乗ってやって来るだろうと言及した。放射能はまだかもしれないが、本年一月号で述べたように、黄砂は既にやって来ているし、大気汚染ももちろんやって来ているはずである。この大気汚染の中共からの襲来について、マスコミとしては珍しいことに、最近日本経済新聞に大型記事が掲載された。 それは六月二十六日の「サンデイ ニッケイ」欄の、編集委員・青木慎一記者によるもので、見出しが「大陸から越境大気汚染」「風に乗って西から飛んでくる」「空に白いもや、西日本で深刻」となっている。そのリード部分は、「西日本を中心に大気環境が悪化している。春先から梅雨にかけて、都市部以外でも空がかすむ現象が発生。夏に多いはずの光化学スモッグが春や冬でも頻発するようになった。専門家は中国から越境してきた大気汚染物質の流入が原因と指摘している。10年ほど前から確認され、発生源がほとんどない離島でも観測されるなど、影響が目立ち始めた」とある。なお、この記事で専門家として名前が出てくるのは、九州大学応用力学研究所の竹内俊彦准教授と、産業技術総合研究所の兼保直樹主任研究員の二人である。
記事の本文ではまず、九州の異様な白い「もや」について触れる。今年の二月下旬と六月上旬に「もや」が発生し、福岡市や長崎市で視界が五キロメートル以下になった。竹内准教授の解説では、これは「石炭など化石燃料が燃えるときに発生する硫酸塩やスス」などの微粒子で、ピーク時には通常の十倍になった。また兼保研究員の分析では、カドミウムや鉛などの重金属も多く出てきたという。
極めて重要な内容なので、青木記者の述べるところをもう少し紹介すると、「21世紀に入って、西日本では大気汚染を示す様々な環境指標が悪化している。九州では、呼吸器疾患を引き起こす浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準達成率が急落した。2006年以降、長崎、熊本、大分、佐賀の各県で以前にはなかった光化学スモッグ注意報が発令されるようになり、今年は高知県でも初めて注意報が出た。公害に苦しんだ日本は大気汚染対策がかなり進んだ。それでも悪化している。竹内准教授は『中国大陸で発生した大気汚染物質が風に乗って運ばれた』と分析する。直接の証拠はないが、専門家の多くは大陸からの越境大気汚染とみる。根拠は大陸に近いほど汚染の影響が深刻になることだ。東シナ海に浮かぶ長崎県福江島は発生源がないのに環境指標の悪化目立つ」「もう一つの証拠がもやが発生するときの気象条件だ。もやが発生しやすいのは西風が強いとき。上昇気流に乗って上空に舞い上がった汚染物質が流されてくる」とある。
ところで汚染物質とはどんな物質かというと、記事にはそれを整理した「主な越境大気汚染物質」という表がある。そこに挙がっている物質名は、硫酸塩・浮遊粒子状物質(SPM)・硝酸塩・光化学オキシダント・一酸化炭素・重金属類の六種である。それが引き起こす健康被害は、同じく「越境大気汚染による健康被害」と題して、説明されている。それには三種類あり、呼吸器疾患・アレルギー・循環器系疾患で、呼吸器疾患とは、ぜんそく・気管支炎・肺気腫・肺がんであり、アレルギーとは花粉症・アレルギー性鼻炎・結膜炎であり、循環器系疾患とは脳梗塞・心筋梗塞などである。「微粒子はマスクを通り抜けて肺の奥に入り、ぜんそくなど呼吸器疾患を引き起こす」。だから竹内准教授は、「空がかすんでいると感じた場合、できるだけ屋外の活動を控えてほしい」とまで言っている。なお兼保研究員の指摘では、中共の環境対策において「大規模な発電所や工場の対策は進んだが」「中小規模の工場の対策が手つかず」で、発生源は増加しているのだと言う。
この大型記事は、日本のマスコミでは中共に遠慮して、なかなか採り上げないテーマを採り上げた、青木記者の力作といえるものではあるが、最後の部分を読むと、結局は中共におもねって、竜頭蛇尾に終わっていると言わざるをえない。別枠の解説にあるが、欧米では越境大気汚染問題は外交問題化し、欧州と北米各国は三十年以上も前の一九七九年に、「長距離越境大気汚染条約」を作ったという。しかし青木記者は次のように記して、力作の結論とするのである。「欧州は隣接する国同士が汚染物質の排出を規制し合っている。アジアは経済や技術の格差が大きく、一律の規制は難しい。越境大気汚染に関心の高い韓国とも組んで、対策技術の移転を積極的に進める必要がある。対策が進めば、日本の大気環境の改善につながるという視点が必要だ」。
つまり青木記者は、日本が一方的に環境技術を中共に提供しろというわけである。そこには中共が大気汚染という公害を垂れ流し、我が国が甚大な被害を蒙っていることに対する、批判や怒りは全く表明されていない。中共は自らの公害によって日本を脅迫し、環境技術を巻き上げようとしているのである。日本の環境技術を安易に提供しても、高速鉄道の例から明確なように、中共に模倣されて世界中に売りまくられるのが落ちである。
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