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軍需産業育成に取り組め

『月刊日本』2012年2月号 羅針盤 2012年1月22日

120124.jpg 政権交代が実現して民主党政権になってから、その評判は全く芳しくないようだが、全部がダメかというとそうでもない。例えば昨年末に行われた武器輸出三原則の緩和は、高く評価できるものである。
 新聞の解説によると、武器輸出三原則とは、まず一九七六年の佐藤内閣で、共産圏諸国、国連決議で禁止された国、国際紛争の当事国またはその恐れのある国への武器輸出を禁止したものであったが、その九年後の一九七六年に三木内閣が、対象をその他の地域にも拡大して、「武器輸出を慎む」としたために、事実上の全面禁輸になったものだという。ただしその後、中曽根内閣がアメリカへの技術提供を認め、小泉内閣がアメリカとのミサイル共同開発を認めた例外がある。

 今回の緩和は、三原則そのものは維持するが、それを抜本的に見直して、官房長官談話の表現によれば、「防衛装備品の海外移転について、平和貢献や国際協力に伴う案件と国際共同開発・生産に関する案件は包括的に例外措置を講じる」としたものである。この平和貢献・国際協力のほうの案件とは、12月27日の朝日の説明によると「自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で使用した重機や防弾チョッキなどを現地の要請に基づいて寄付したり、海賊対策の巡視船を輸出したりすることを想定している」とある。国際共同開発・生産の案件とは、今までアメリカと一部分で認められたものを、NATO諸国などに拡大するもので、特に戦闘機の開発を想定しているらしい。
 この武器輸出三原則の緩和に対しては、朝日新聞が12月25日の社説で反対を表明しているし、公明党の山口代表も疑問を呈している。ただし自民党時代に大幅緩和が実現できなかったのは、この問題に関して、自民党が余りにも不熱心であったからであり、政権に返り咲こうとするならば、その点は根本的に反省してもらわなければならない。そして今後、民主党政権にしろ自民党政権にしろ、国際共同開発・生産に止まらず、いっそうの緩和を実行して、日本製の武器の輸出を、積極的に促進してゆかなければならない。それは日本の将来にとって、軍事産業が決定的に重要になるからである。
 現在の日本は、「失われた二十年」といわれるように、経済が長期に渡って低落している。しかもその上に産業の空洞化が急速に進行している。空洞化の要因は色々あるが、企業が日本から逃げ出してしまうのである。その代表である自動車産業では、ハイブリット車の基幹部品であるエンジン・モーターや電池すら、海外生産を志向するようになっている。その点、安易に海外生産ができずに、国内生産にこだわらなければならないのは、軍事産業であろう。
 日本には戦前から軍事産業の伝統があり、戦後はその技術が自動車産業や造船業に生かされて、高度経済成長に貢献した。ただし航空機産業はアメリカによって甚だしく規制され、健全な発展ができなかった。次期戦闘機・FXにアメリカのF35がきまったが、候補の三機種のうちで、技術開示において最も劣るとされている。つまり日本は現在の技術レベルすら維持できなくなることが、予想されている。もはやアメリカを頼りにしていても、高価な兵器を買わされるだけなのである。
 したがって日本は、今回の武器輸出三原則の緩和を契機に、独自の軍需産業の育成に積極的に取り組むべきである。三原則の緩和には、朝日は社説で反対を唱えたが、結局すんなりと決まってしまった。そこには明らかに空気の変化が感じられる。そうなった最大の要因は、このところ極めて明確になった、中共による急激な軍備拡張にあるに違いない。日本の軍事産業を成長させるのは、まずは我が国の軍備を充実させるためであるが、それを海外に積極的に輸出すればよい。中共の軍事的脅威に直面するのは、日本だけでなく、東南アジアや南アジアの諸国も同様なのであるから、そこに広大な市場が存在しているわけである。
 そもそも武器の輸出はどれくらい儲かるのか。韓国がインドネシアから受注した潜水艦3隻の値段は約12億ドル(約935億円)で、昨年一年間の韓国の武器輸出額は約28億ドルだという。これを報じた朝日12月6日の牧野特派員の記事には、「韓国の専門家の一人は、武器輸出三原則見直しで揺れる日本について『日本が武器輸出に制限を抱えているため、我々がシェアを伸ばす余地がある』と語った」とある。また昨年九月、アメリカは台湾への武器輸出を決定したが、その額は53億ドル(約4050億円)であり、昨年末にイランの脅威に対抗して、アメリカがサウジアラビアに輸出した兵器は、F15 戦闘機など、294億ドル(約2兆2800億円)であった。

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