- 2012年3月13日 17:56
- 時評
最近の産経新聞と朝日新聞に、ヨーロッパに対するシナ人の経済侵略の実態が報じられている。極めて重要な事実であるが、余りと言うより殆ど注目されていないようなので、まとめて紹介しておきたい。
産経は、1月28日のロンドンの木村正人記者による、「中国マネー欧州席巻」「英ビッグベン買収観測も」という記事、朝日は2月26日の北京の吉岡桂子記者による、「欧州インフラ中国の胃袋に」「英で水道、ギリシャで港 揺らぐ国債より魅力的?」という記事である。朝日にはもう一つ3月5日にも、伊東和貴記者・沢村亙記者による、「欧州に『中国化』の波」「工場進出・インフラ投資、続々」「安い原料・賃金 急成長」「安保面で警戒感も」という記事があるが、これは主として後で取り上げることにしよう。
まず木村記者と吉岡記者の記事は、相違する点もあるが、内容的にはかなり共通しており、ヨーロッパ諸国のインフラを、中共が買収している実態報告である。取り上げられている事例も同じで、イギリスとポルトガルそれにギリシャの場合である。
イギリスでは1月に、中国投資有限責任公司(これは産経の表現、朝日は中国の国家ファンド「中国投資(CIC)」と表現)が、ロンドンとその近郊に上下水道のサービスを提供する、英水道会社テムズ・ウォーターの株式の8.68パーセントを買収した。産経には「投資額は発表されなかったが、5億ポンド(約604億円)は下らないとみられている」と言及されている。
ポルトガルでは、昨年の末に、中共の国有企業である中国長江三峡集団が、政府から電力会社EDPの株式の21パーセントを、26億9千万ユーロで買った。また今年の2月2日、ポルトガル政府は、国営送電会社RENの株式25パーセントを、中共の国有送電網会社「国家電網」に3億8700万ユーロ(約390億)円で売ると発表した。
ギリシャでは、ピレウス港の35年間に及ぶ運営権を、「中国遠洋運輸」が49億ユーロ(約4900億円)で獲得した。このピレウス港については、朝日の3月5日の記事のほうに、沢村記者による現地取材があり、「アテネ郊外のピレウス港は紀元前から欧州の玄関として栄え、近代以降は海運大国ギリシャの発展を支えた」とその歴史が紹介され、重要な港湾であることが分かる。また沢記者によると、運営権が売られたのは09年で、その対象は同港最大のコンテナ埠頭であるとしている。
朝日3月5日の記事で特に注目されるのは、伊東和貴記者による、イタリアの現地取材に基づく報告であり、シナ人の工場進出に関するものである。イタリアのフィレンツェの近くにプラートというと都市があり、そこにシナ人がどっと押し寄せ、「人口19万人のうち中国人は不法移民を含め4万人以上とされ、人口比では欧州最大のチャイナタウン」となったのだという。
そうなった理由は、「中世から続く織物の町に異変が起こったのは約20年前。浙江省温州から来た中国人が工員として衣服工場で働き始めた。10年ほど前から自分で工場を起こす者が出てきた。そして近年、一攫千金を夢みる同胞が温州などから殺到している」からである。「プラートにある中国人経営の衣服工場は約3千」だとのことであるから、たった十年で爆発的な急成長を遂げたわけである。
では何故こんな急成長ができたのか。「成功の秘密は安い原料と労働力。生地は本国から格安で輸入する。移民を長時間働かせて急な注文にも応じる。労働環境は過酷を極める」。シナ系オランダ人宣教師の証言によると、「16時間続けて働き、睡眠は4時間。食事も寝るのも工場で、3カ月休まないこともある」という悲惨な状態である。つまりこれは、中共国内の工場のあり方を、人間も環境もセットにして、ヨーロッパの地に移植したものに他ならない。「警察は不法移民を雇う闇工場への摘発を強化」したが、「旅券もビザもない移民を中国大使館は中国人と認めず、強制送還のための二国間協定もない。工場をたたんで別の工場を立ち上げて逃れる業者の多い」という有様であるという。
こんな状況であるから、1990年代後半に約2千社あったイタリア人経営の衣服メーカーは約400社に激減した。つまり世界でイタリアの洋服と称して売られているものは、その多くが実はシナ製と同じことなのである。さすがに現地では反発が出てきており、「左派市政が長年続いてきたプラートでは09年、右派の市長が誕生」し、同市長は移民反対を唱えているという。またギリシャのピレウスでは、労働者がシナ人だとの明記はないものの、港湾労組が、中共の海運会社は「労働協約を結ばず、組合員よりはるかに低い待遇で労働者を雇っている」と怒っているという。
庶民のレベルではこのような反発があるのだが、産経が特に言及しているが、ヨーロッパ諸国の政治家達の警戒心のなさである。木村記者は、「欧州には米国のような対中警戒心が薄く、逆に中国マネーや中国企業を歓迎する声が強い。債務危機で金欠病に陥る単一通貨ユーロ圏はこぞってラブコールを送る」とし、「中国からの投資拡大を図るために北京を訪問したばかりの英オズボーン財務相」は、テムズ・ウォーター株の買収を歓迎したと述べる。ヨーロッパの政治家も、随分とだらしなく劣化したものである。
朝日の吉岡記者は、2月4日まで訪中していた「ドイツのメルケル首相は、『我々は開放された市場。保護主義には陥らない』と述べ、積極的な投資を呼びかけた」と書き、それに続けて、「ただ、中国側は反発を懸念しており、温家宝首相は『(欧州資産を)買い占めることはない。そんな考えも能力も食欲もない』と説明した」と述べて、記事全体の結びの文章としている。しかしこの温首相の発言は、例の「我々は絶対に覇権を求めない」と全く同様に、本心とは全く逆のことを言っているのである。したがって吉岡記者の記事は、中共政権におもねって北京大本営報道に明け暮れる、まことに朝日らしい記事と言える。
現在のヨーロッパの事態は、日本にも大きな教訓を与えてくれるはずである。例えばポルトガルでは、電力会社・送電会社の株式が買われているわけだが、原発事故を理由に電力会社を無闇に叩いていると、日本も同様な事態に陥らないとも限らない。私は東日本大震災の直後に、東北地方の基幹産業である水産業が、シナ人に買収される可能性に言及しておいたが、それは他の日本の伝統産業でも充分起りえることである。今は日本の高級米が中共の富裕層に売れると無邪気に喜んでいるが、日本の米作そのものがイタリアの衣料産業のように、シナ人に乗っ取られてしまうかも知れないのである。
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