- 2012年4月15日 14:05
- 時評
日本で大騒ぎしたのは、ロケットの破片などが落下し、被害が出ることを心配したためであったが、世界第二の経済大国である中華人民共和国(略称・中共)では、ロケット打ち上げの落下物による被害など、幾らでも起っていることなのである。しかしこの重大な事実は、日本では一般に殆ど知られていない。
つい最近の3月31日に、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州鎮遠県の尚寨トゥー族郷という所に、通信衛星「亜太7号」を打ち上げた、長征3号B型ロケットの残骸が落下したことが、「ロケットの残骸落下 住民パニック・毒ガスの黄色い霧」というタイトルで、インターネット・サイト「サーチナ」に出ている。それによると、四川省の西昌衛星発射センターで、午後6時27分に打ち上げられたロケットは、7分後には尚寨郷の付近に達して爆音が轟いたが、ついで白い物体が見えてどんどん人間のいるほうに落下してきた。
「物体は轟音(ごうおん)をたてて小川の近くに落ちて、4つの部分に分裂した。2つは山の斜面に突き刺さった。残りの二つは水田に落ち、黄色い煙を噴出しつづけた。住民は遠くから、物体と物体の周囲で次第に濃くなる『黄色い霧』を眺めているしかなかったという」。「周囲の地面より低くなっている小川の上をつたうようにして、『黄色い霧』は広がった。『黄色い霧』は、長征ロケットの推進剤として使われる四酸化二窒素で、強い毒性と腐食性がある」。つまり落下物の脅威だけでなく、毒ガスの危険性もあるわけである。
「サーチナ」には、ロケット残骸の落下についてのニュースが、外にも沢山取り上げられているので、その幾つかを紹介しておこう。なお「サーチナ」の記事は、中共の新聞やネットから集めたものであり、別に秘密にされているものでもなんでもない。
昨年の7月11日、データ中継衛星「天鏈1号02星」を打ち上げたロケットが、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州鎮遠県の大地郷に落下した。
昨年7月5日、甘粛省蘭州市西固区で、「人工降雨用ロケット弾が民家に飛び込んだ。ロケット弾は屋根を突き破り、台所に置いてあった洗面器を貫いた。すぐ近くで住人女性が食器を洗っていたが、けがはなかった」。
一昨年9月5日、通信衛星「シノサット6号」を、長征3号C型ロケットで打ち上げ、その補助エンジン(ブースター)3基すべてが、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州の鎮遠県に落下した。ブースターは、長さ約10メートル、直径約2メートルの巨大なもので、「落下時に大気に極めて大きな衝撃を与え、周囲の直径60メートルの草木が枯れた」。またこのブースターには、「推進剤に非対称ジメチルヒドラジンと四酸化窒素を使用。いずれも強い毒性がある」という。
一昨年1月17日、測位衛星「北斗」を長征3号C型ロケットで打ち上げ、ブースターが貴州省遵義市内に落下した。「落下地点に大きな穴が開き、約30メートル以内にあった草木が焼けこげた」。
2007年10月24日、中共初の月探査衛星「嫦娥」を長征3号A型ロケットで打ち上げ、その残骸が貴州省に落下した。貴州省内の具体的な地名は出てこないが、「サーチナ」にはその時の写真が二つ掲載されている。一つは「耕地に落下したロケットの一部。推進剤のタンク部分とみられる」と説明があるもので、私は中共のロケットについては全くの無知であるが、写っている人間と比較すると、C型のブースターよりかなり大きく見える。もう一つは、「貴州省民家を直撃したロケットの残骸」とあるもので、太くてかなり長さのあるパイプが、民家を破壊している。
以上の例から分かるように、ロケットの落下する地域は大体決まっているようである。それは貴州省の東部で、特に黔東南ミャオ族トン族自治州の鎮遠県というところである。そうなる原因は、衛星の打ち上げ場所である発射センターが、四川省の涼山イ族自治州の州都である西昌であり、そこから真っ直ぐ東方に打ち上げるからである。したがって、ロケットの形式にも寄るのであろうが、落下地点は事前に予測でき、約10万人が避難している。今までには人的被害も、かなりあったことであろう。
つまり貴州省の東部地域は長年にわたって、落下物と毒ガスの恐怖にさらされ続けているのである。こんな人道に反することが平気でできるのも、この地帯が地名からも分かるように、非シナ人すなわち「少数民族」地帯であることが、かなり関係しているのではないだろうか。
私の知る限りにおいて、北朝鮮のロケット発射に大騒ぎしているマスコミが、中共における悲惨な現実をまともに報道するのを見たことがない。中共で公表されていることでも、中共の国家権力にとって好ましくないことは、日本人に知らせるのを自粛するのである。彼らがシナ人の精神奴隷であることの、何よりの証拠である。
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