- 2012年6月16日 14:50
- 時評
6月13日、朝日新聞の一面トップに、「中国、北朝鮮に軍用車両」「安保理決議に違反 昨年8月 日米韓が把握、公表せず」という記事が現れた。今年4月15日、北朝鮮の軍事パレードに登場した、巨大なミサイル運搬車が、中共製のものであることは、すでに当時から確実視されていたが、それが全くに事実であることが確定したのである。それにもまして重要なことは、昨年の段階で日本が明確な証拠を掴んでおり、しかもそれが完全な安保理決議違反であるにもかかわらず、米韓も含めて中共に配慮して、事実を公表しなかったことである。
その経過は、昨年8月にカンボジア船籍の貨物船が、中共から北朝鮮に行ったことは、情報衛星で掴んでいた。その船が10月に大阪港に入港した際に、輸出の記録を見つけて、大型特殊車両4両があることが判明した。そして4月の軍事パレードの現れた車両が、それと同一のものだと確認したという。簡単に述べるとこうなるが、「複数の日本政府関係者が朝日新聞の取材に明らかにした」と称する牧野愛博記者による記事は、このあたりの説明が驚くほど詳しい。この事実を翌14日に、同じく一面トップで報じた産経新聞では、「産経新聞が入手した6カ国協議参加当局作成の報告書で分かった」とし、経過の説明は遥かに簡略である。
この牧野記者による記事は、2面にも続いていて、あわせて長大な記事になっているが、朝日の報道の特徴は2面のほうによく表れている。タイトルは、「日米韓 背信の黙認」「「疑惑の船 日本が物証」「北朝鮮の暴発恐れる 緊張緩和優先 米に追従」とある。実物を見てもらうと分かるが、一番の大見出しは、公表しなかった日米韓に対する批判である。なお14日の社説では、「ミサイル車両 中国の輸出は許されぬ」とあるように、朝日には珍しく中共批判を展開しているが、締めくくりでは日米を批判して終わっている。
では日米韓は、どうして明確な中共の安保理決議違反を黙認したのか。13日2面の牧野記者の解説は実に冗長で、ごたごたしているのだが、その要点を簡略に整理すれば、次のようなものである。政府関係者の言によれば、4月の軍事パレード後、「米政府は日本が通報した事実を中国に非公式に提起したという。中国側は輸出の事実だけは認めたが、『民生用だった』と釈明したという。」しかし日米韓は国連安保理で、中共を追及することを断念する。それは、「『中国を追い詰める時ではなかった』。政府関係者の一人はこう語る。当時、日米韓の最大目標は、北朝鮮の3度目の核実験を防ぎ、朝鮮半島の緊張を緩和することだった」からなのだという。
そして4月23日に北京であった、胡錦濤主席と朝鮮労働党国際部長・金永日との会談で、中共側は「北朝鮮の一連の行動が日米韓の防衛体制の強化を招いている点を指摘」して、核実験に対して強く警告した。そのために北朝鮮は、核実験を強行しなかった。それを評価して、アメリカは中共の明確な安保理決議違反に目をつぶった。「制裁をやり尽くし、北朝鮮に対する有力な外交手段がない日本には、中国との妥協を決めた米国に従う以外に選択肢はなかった」。要するに、北朝鮮が核実験をしなかったのは、中共のおかげであるというのである。
ただしこれは余りにも当たり前なことではないのか。そんなに有り難がることなのか。だいいち中共が、自身にとって脅威になるに違いない、北朝鮮の主体的は核兵器の所有など、絶対に許すはずがないのである。そして中共には、それができる。なぜなら北朝鮮は朝鮮戦争の際に、まさに消滅の瀬戸際で中共に救われたのであり、中共には全く頭が上がらない完全な属国であるからである。そもそも北朝鮮の核問題は、始から日米韓に対する脅迫の道具として、中共が利用してきたものに違いない。
今度のミサイル運搬車問題によって、ますますアメリカと中共の結託・癒着関係が明らかとなった。それは今後の東北アジアの状況が、どのように展開し行くかを予言している。そこではアメリカの存在は急速に後退し、中共主導の政治秩序・経済秩序が作られてゆくであろう。中共の東北地方・ロシア極東地方・韓国と一体化して、北朝鮮を取り込んだ経済圏が形成され、核兵器を放棄した北朝鮮は、政治体制をそのままにして、経済をある程度自由にする中共化が進行する。本ブログで何度も指摘しておいたことだが、その時には日本もそれに巻き込まれて、膨大な経済援助を提供させられ、他方では日本の領土における、シナ人のみならず朝鮮人による人口侵略が、急速に進展するであろう。
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