- 2013年1月23日 23:40
- 時評
朝日新聞は昨年の中共における虐日国家テロの勃発以後、頻りに中共擁護の論陣を展開しているが、それが最もよく表れているのが、オピニオン欄の長文のインタビューであろう。特に外国人を起用して、いかにも客観性があるように演出するのが、なかなか気の利いた手法と言える。つい最近1月15日にそこに出てきたのが、元マレーシア首相のマハティールである。題して「ルックイーストはいま」。正式な名前は、マハティール・ビン・モハマドと言うらしい。聞き手は機動特派員・柴田直治であり、マハティールの著書や発言に基づいて質問している。
このインタビューのポイントは二つあり、それは二つの見出しに端的に表現されている。
一つは「教訓は日本の過ち 自らの価値をすて 欧米に迎合した」。もう一つが「中国は脅威ではない 東洋の事は東洋で問題解決すべきだ」である。つまり一つは経済の問題、もう一つが外交・安保の問題で、その二つをアジアの視点で考えなければならない、と言うのがマハティール発言の基調である。
経済の問題については、次のように言う。
「日本が苦境にあるのは、経済大国への道を切り開いた自らの価値を捨て、欧米に迎合したからだ。例えば終身雇用制などに重きを置かなくなった。政府の指導や民間企業との協力関係はいまや犯罪視される」
「われわれが見習ったのは、現在の日本がやっていることではない。いまはあなたたちの犯した過ちを繰り返さないようにと学んでいる」
「確かにグローバリゼーションはやってきた。それは欧米のアイデアであり、彼らの利益のために考えだされた。新たなシステムを採用すれば、混乱はつきものだ。日本は国内の状況を斟酌せずに受け入れた。それまでのやり方とグローバリゼーションを調和させることに失敗した」
しかし日本を批判するあまり、韓国の方が「古い社会システムと労働倫理」が残っているから、日本より学ぶべき点が多いと言うのは、明らかにウソだろう。韓国の経済的好調と言うものは、日本よりも却って徹底的に欧米の価値観を受け入れたからではないのか。
なお経済問題について、特に若い人々に知っておいてもらいたいのは、このグローバルゼーションを「国際化」と言って、盛んにもてはやしたのは、外ならぬ朝日新聞だったことである。朝日新聞は常に戦後民主主義の側に立ち、アメリカによる戦後改革の延長としての、アメリカの対日要求の手先を務めたからである。柴田記者は、その点については全く触れていない。
もう一つの外交・安保問題は、経済問題よりはるかに重要である。以下、柴田記者とマハティールとの、特に重要な問答を紹介する。
柴田「中国はいまやルックイーストの対象であり、脅威ではないと発言されています。日本や他の近隣国の指導者とは見方が違うようです。」
マハティール「過去2千年、中国がマレーシアを侵略したことはない。ベトナムに拡張を試みたが、あきらめた。日本に攻め込もうとしたのは、モンゴル高原に発する『元』だ。われわれを植民地にした西欧に比べれば中国が過去、好戦的だったとは言えない。市場経済の時代に、中国が日本をはじめ、周辺国を侵略する意図を持つとは思えない。」
柴田「日本では自民党が選挙中、自衛隊の国防軍化や尖閣諸島への公務員常駐などの政策を掲げました。」
マハティール「実行すれば、中国はこれまで以上に軍備を増強し、対抗しようとするだろう。お互いの挑発がエスカレートし、ついには戦闘に至るかもしれない。賢明ではない。」
柴田「日本は経済的に自信を喪失し、その反動として右傾化が進んでいるとの指摘があります。」
マハティール「危険なことだ。日本が自信を取り戻すのは軍事ではなく、経済力を回復させるしかない。」
つまりマハティールは、現実に存在してどんどん拡大する、中共の軍事的脅威を、全く見ようとしない。そして、その軍事的脅威への日本の最低限の対応の方を危険視する。まさに朝日が求めているものに、ドンピシャリの発言である。日本が軍備を増強すれば、中共はそれに刺激されて増強し、軍拡のエスカレートになると言うのは、朝日新聞がずっとやって来た巨大なマヤカシである。日本が少しも軍拡をしないのに、中共は一方的に凄まじい軍備増強に邁進してきたのが、最近の歴史ではないか。完全に破産したその論法を、マハティールはまだ使おうとしている。
ただしマハティールの発言で、もっとも愚かしいところは、「過去2千年、中国がマレーシアを侵略したことはない。」「われわれを植民地にした西欧に比べれば中国が過去、好戦的だったとは言えない。」と言っている部分である。過去に侵略しなかったとしても、今後いくらでも侵略できることには、全く頭が回らないらしい。
それだけではない。実はマレーシアは、現実にシナ人によって大規模に侵略されているのである。私が以前から主張しているように、侵略には軍事的侵略だけでなく、人口的な侵略というものもある。マハティールは、「われわれを植民地にした西欧」と言っているが、その植民地支配者・イギリス人の手先となって、マレー人を搾取しまくったのは、ほかならぬシナ人そのものである。第二次大戦後に植民地はなくなって、イギリス人は出て行ったが、手先であったシナ人はそのまま居座ったのである。かくてシナ人はマレーシア人口の四分の一を占めている。経済的には完全に実験を握っているから、これこそまさに実質的な侵略状態ではないか。
しかしマハティールは、このシナ人による侵略状態には目を瞑り、中共による現実的な軍事的脅威すら無視しようとする。つまりシナ人に完全に屈伏しているのである。昔はもっとまともな人間に見えたが、ずいぶんと駄目になるものである。
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