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羊頭狗肉の中共政治道徳

『月刊日本』2013年2月号 羅針盤 2013年1月22日
※タイトルは「羊頭狗肉のシナの政治道徳」の方が正確です

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 昨年の尖閣紛争に起因する虐日国家テロの勃発以来、朝日新聞は中共擁護の論調を展開し、中共の一方的な見解もしばしば紹介して、盛んに胡麻を擦ってきた。その中でも決定版と言うべき記事が、昨年の十二月十二日に掲載された。それはオピニオン欄に載った、閻学通という人物に編集委員・加藤洋一が行ったインタビューで、題して「中国・強硬派の世界観」とある。閻は清華大学当代国際関係研究院院長で、加藤によると対外「強硬派の代表格」であり、「自称『リアリスト』。国際会議やテレビにしばしば登場し、米国や日本を痛烈に批判する。米主要紙への寄稿も盛ん」であるという。

 このインタビューの核心は、加藤が「取材を終えて」の中で次にように説明している個所である。「特に印象深かったのは『価値』の創造でも欧米に挑戦する姿勢を見せたことだ。儒教思想を基に、米国がいわば『専売特許』とする民主主義、人権などを凌駕する、アジア的価値観を作る自信を見せた。」経済や軍事だけでなく、思想・道徳のレベルでも欧米に優越しようと言う訳である。その部分の具体的応答は、加藤が「米中間の価値をめぐる戦いも論じていますね」と問い、閻は「中国は、欧米の言う『民主主義』『自由』『平等』よりはるかに高いレベルの政治道徳を持っている。中国古代思想に言う『公平』は『平等』に勝り、『正義』は『民主主義』より高い。(上品、丁寧なという意味の中国語の)『文明』は『自由』を凌駕する」と答えている。まさに満々たる自信の披瀝である。
 そこでさすがに加藤もこう質問する。「しかし、中国国内でそうした価値は実行されていないのでは」。それに対して「確かにその点はよく指摘される。まず国内で実行しなければならないのだが、今は国民の関心が経済に集中し、儒教的な価値の実行には興味を感じないのだから難しい」と閻は答えざるをえない。すなわち、この実行していないところが、彼らの最大の弱点である。しかも「今は経済に集中しているから、儒教的価値の実行は難しい」と言い訳しているのであるが、これは「今は」ではなく「シナの歴史を通じて常に」と言うのが、完璧に正しい。
 すなわち、シナの政治道徳なるものは、立派なことは言われるのであるが、それは常に「絵に描いた餅」であったのだ。シナは歴史だけは長いから、いろいろな諺があるが、その中に「羊頭を掲げて狗肉を売る」と言うのがある。羊の頭を看板にして、実際は犬の肉を売っていることを表現している。シナの政治思想と実際の政治とは、まさにこの羊頭狗肉の関係にあり、それが変わることなく何千年も続いてきたのである。
 加藤編集委員は、この重要なポイントに気が付きながら、結局は閻に丸め込まれてしまっている。「取材を終えての」のところでは、「中国の古代思想を現代中国のパワーに結びつけようと模索するなど知的な懐は深い」「中国の大国意識の底の深さを感じさせた」と感心し、「いずれにしろよほど深く考え抜かないと、中国の大国意識に伍するのは難しいかもしれない」と結んでいる。しかし閻が振り回す理屈など、実に他愛ないものである。「公平」が「平等」に勝る理由として、「たとえばバスに乗る時、早い者勝ちが『平等』、妊婦やお年寄りに席を譲るのが『公平』だ」と説明している。
 シナ人が道徳的にも優越するという誇大妄想の考え方は、決して閻個人のものではない。冒頭近くの閻の発言に、「中国の政治目標は、かつての歴史の中で占めていた国際的な地位の回復だからだ。政府が打ち出した『中華民族の復興』だ」とあることから明らかなように、これは中共の国家戦略そのものである。
 シナ人が此処まで傲慢になってしまったのはなぜなのか。それにはシナ人の基本的性格があり、経済成長・軍事成長の背景もあるが、直接的な原因は欧米諸国の堕落にある。自由・平等・民主主義などの価値は、世界史を貫く普遍的な価値である。したがってアメリカの専売特許でもなんでもないが、最大の問題は、欧米諸国がこれらの普遍的な価値の実現において、凄まじいダブル・スタンダード状態に陥っていることである。アラブ諸国の人権・民主化に熱心でも、中共の人権・民主化には、まるで熱意がない。まして侵略行為には何にも言わない。それがシナ人を限りなく付け上がらせているのである。シナ人との道徳の戦いを、欧米諸国がやらなくても、日本人はやらなければならない。日本の場合、それが出来ないことは、亡国の運命に直結するからである。

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