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ODAが招いた中共発の大公害

『月刊日本』2013年3月号 羅針盤 2013年2月22日

 

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私は本欄で二年前に、中共発の公害が日本にも及んでいることについて、三度ほど書いたことがある。その中共の公害が、このところ日本でも急に騒がれるようになった。一月に北京で大発生した大気汚染のあまりの凄まじさに、日本のマスコミも報道せざるを得なくなったようだ。私に言わせれば、何を今更白々しいとの感が強いのだが、一旦始ると連日の大量報道が続いている。

 

公害問題というと泣いて喜ぶ朝日新聞も、中共の公害問題には腰が引けていたが、一月三十一日の朝刊には、三十日の北京の様子を中心に報告されている。なおこの記事のすぐ下に、環境省は「直ちに健康に影響があるレベルとは考えにくい。冷静な対応を」と言ったとあるから、いまだに中共に遠慮して、地味な報道をしているとの印象を受けた。
ところが翌日、二月一日の朝日新聞には、「大気汚染 成長中国に影」の見出しのもとに、突如として全八段にも及ぶ大型記事が出現した。中味は、北京など主要四都市で、PM2・5が原因で、約8500人が早死にしたとの研究がでたこと、中共の大半で使われるガソリンに含まれる硫黄分の規制基準は1500ppm以下で、日本や欧州の基準の約15倍であることなど、実にさまざまなことが出ている。
またその翌々日、二月三日の朝日新聞の社会面には、「日本の大気大丈夫? 中国の汚染 越境に不安も」と、ようやく日本への影響を心配する記事が現れた。ここでは国内の状況がいろいろ報告されていて、福岡市の40台代の女性は、原発事故のために娘と一緒に関東から避難してきたが、ここでは大気汚染を心配しているという。中共の大気汚染による健康被害の方が、原発より遥かに重大であろう。
いま話題になっているのは、例のPM2・5であるが、この専門家が九州大学応用力学研究所の竹村俊彦准教授で、同氏は中共からの大気汚染の状況を、地図で表すウェッブサイトを運営しており、毎日更新されるらしい。二月一日・二月三日の記事に掲載されていて、中共の東部地域がひどく、それが偏西風に乗って、日本列島に襲い掛かっている状況が良くわかる。竹村准教授は以前からこの問題を研究していたが、マスコミに無視されていたようである。
二月四日の天声人語にも、大気汚染問題が出てくる。冒頭に「中国で環境の問題を取材して『病む天地』と題する記事を書いたのは、かれこれ20年も前になる。経済発展の奔流がいよいよ急になった頃だが、すでに大都市や周縁では、空も河川も汚染にむしばまれていた」とある。二十年前というから、九十年代の初めである。その時にこの惨状であったうえに、その後急速な経済成長をしたが、環境対策を怠ったために、今日の事態になったのに違いない。
実は、三十一日の記事には、以上の事実を数字的に証明する、環境省の染谷憲治・中国環境分析官による証言がある。それは、二〇〇四年に中共政府は環境対策費にGDPの7%が必要だと言っていたのに、実は2%強しか使っていなかった。日本は七十年代前半に、8パーセント以上使っていたと言うものである。中共政府は、環境対策など全然真面目にやってこなかったのである。
二月一日の記事の末尾に、「環境省は99年から毎年開いている日中韓の環境相会合で情報共有や技術協力などの話し合いを続けている」とあるから、環境省は中共側が環境問題に対して、怠慢を極め込んでいたことを知っていた。朝日をはじめとするマスコミも、当然よく知っていたのに、それを報道しなかったのである。経済界は環境対策費がいらない中共に進出して金もうけに励んだ。日本の環境団体は、東南アジアへの日本企業の公害輸出を批判したが、左翼崩れの体質のためか、中共には何も言えなかった。
中共の急速な経済成長のために、もっとも貢献したのは日本であろう。巨額なODAのみならず資本と技術を惜しみなく提供し、中共は世界第二の経済大国になった。しかしその経済成長の成果は、環境対策には使われずに、もっぱら軍備増強に充てられて、中共は世界第二の軍事大国になり、日本を軍事的に脅迫するようになった。同様に、環境問題でも公害を輸出されて、日本国民の健康を大いに害されている。
日本人はわざわざ日本の金で、日本に軍事的脅威と環境的脅威を共に与える凶悪国家を、せっせと育てたのである。なんと愚かしいことではないか。さらに愚かしいのは、この滑稽極まる現実に、少しも気が付いていないことである。

※一昨年、2011年に私が『月刊日本』羅針盤に書いた、中共の環境問題に関する文章は、次に三つである。
1月号 口蹄疫ウイルスは黄砂に乗って
8月号 中共から襲来する大気汚染
9月号 中共の公害問題を黙殺するな!

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