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中共に仕組まれた「反日デモ」

『月刊日本』2013年11月号 羅針盤 2013年10月22日


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昨年の9月11日は、日本政府が尖閣諸島を国有化した日であった。そのため今年も中共で「反日デモ」が起きるのではと予想された。朝日新聞の11日夕刊には、林望記者が北京の日本大使館前の当日の状況を早速伝えている。それによると「11日午前は数人の武装警察官が正門前に配置された以外、特別警備態勢も敷かれなかった。ネットでも目立ったデモの呼びかけは確認されていない。しかし尖閣諸島を巡る対立に歴史認識問題なども重なり、日本への反発は根強い。満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が起きた18日などを控え、当局の警戒は続いている」と述べている。

林記者は、「日本への反発は根強い」と言っているが、ではその後の実態はどうだったのか。昨年は中共各地で展開された、暴力による凄まじい破壊行為がなかっただけでなく、デモすらなかったのである。柳条湖事件の現場である瀋陽では、18日に例年のように記念館での式典はあったが、昨年のような日本領事官へのデモはなかった。その瀋陽の様子を19日朝刊で石田耕一郎記者が伝えているが、その中に注目すべき部分がある。「昨年の瀋陽でのデモを巡っては参加した複数の政府系企業の職員らが朝日新聞の取材に『職場で参加を指示された』と証言。官製デモだった疑いも指摘されている」

この点については、実は数日前の12日朝刊で、石田記者はもっと詳しく説明していた。「中国東北部の遼寧省にある政府系企業で働く20代女性は昨年9月18日、瀋陽市の日本総領事館周辺であった抗議デモに参加した。」「女性は前日、職場の上司から電話で『18日は有給休暇を与えるのでデモに行け』と告げられ、同僚数人と赴いた。 数千人の参加者が総領事館を囲んでいた。女性は2時間ほどいて、一部の参加者が暴徒化して投石を始める前に隊列を離れ、繁華街に買い物に行った。『退屈な仕事を休めてうれしかっただけ。今年も、もし職場が有給休暇をくれるなら参加すると思う』。女性はあっけらかんと話した」まことにふざけた話である。「官製デモだった疑い」どころか、完璧な官製デモであることは、余りも明らかである。

ところで昨年の凄まじい破壊行為が展開されたのは、9月15日であった。湖南省長沙の日系デパート「平和堂」は3店舗を破壊され商品を略奪されたが、「被害額は約20億円、テナント分を含めると30億円を超えた」(19日、朝日朝刊)という。もっとも多くの被害を出したのは山東省の青島で、その後の状況を、9月13日の産経新聞で河崎真澄記者が報告している。ジャスコ(イオン)の黄島店は、直接の被害だけで7億円だったが、昨年11月に営業を再開した、放火によって壊滅的に破壊された、ホンダとトヨタの販売店は、今年に7月と8月にようやく営業を再開したと、中共市場から離れられない日本企業の実情を伝えている。

河崎記者の報告で貴重なのは、以下の部分である。「日中関係筋は『反日デモで破壊された日本企業への補償はおろか、暴徒への処罰、責任追及はほとんど進んでいない』と顔を曇らせる。放火された電子部品大手、ミツミ電機の青島工場はいまも外壁が黒こげのまま。」「青島の日本総領事館などでは地元当局に対処を申し入れているが、いまだ反応はない。責任追及や補償問題もあいまいなまま。」

いわゆる「反日デモ」は、明らかに中共の国家権力による、仕組まれた官製デモであり、凄まじい破壊行為を伴っていたのだから、完全なテロである。したがって、責任追及や補償は、領事館が地元当局に要求するのではなく、日本国の政府そのものが、直接中共政権に要求するものでなければならない。しかしそれは全く行われていないようだ。

まさに9月15日こそ、日本が凄まじい屈辱を受けた日であって、日本の「国恥記念」であると言わなければならない。しかしほとんどの日本人は、わずか一年前に受けたこの屈辱をすっかり忘れ、それに対して正当な怒りを表すことすらしない。一寸の虫にも五分の魂と言う。世界のどんな弱小民族と言えども、現在の日本人のような腑抜け民族はいないだろう。今回デモが行われなかったのは、「背景には、昨年のデモが暴徒化し中国のイメージを損ねたことへの官民の反省がある」(9月12日、朝日朝刊)からでは全くない。普通の市民が暴力団の恐喝に屈伏するように、日本人がシナ人の凶悪な脅しに、何の抗議の声も上げないからである。つまり、さらなる恐喝を行う必要が無いからであるに過ぎない。


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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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