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ウイグル問題の本質は民族独立だ

『月刊日本』2013年12月号 羅針盤 2013年11月22日


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十月二十八日、北京の天安門前にウイグル人の車が突入して爆発した。乗っていたのは男とその妻、男の母親だという。それから間もない十一月六日、今度は山西省の省都太源の共産党省委員会の前で、大規模な爆発事件が起きた。中共政府は、天安門の事件をウイグル人によるテロだと大宣伝を始めたとたんに、はるかに重大なテロである太源事件が発生したのは、まことに皮肉である。

ウイグル人よる天安門突入は、巻き添えになった人間は出たものの、基本的にウイグルの人の置かれた惨状を国際社会に訴えるための、壮絶な自爆行為であるといえる。その意味で、非暴力主義のために焼身自殺を行う、チベット人の行為と何ら異なるものではない。

チベット問題やウイグル問題を、中共の人権問題として認識することが、当たり前のようになっているが、それは完全な誤りであり、はっきり言ってしまえば、意図的に行われている曲解である。深刻な人権問題は、チベット・ウイグルに限らず、中共全土でいくらでも存在する。チベット問題・ウイグル問題の本質は、侵略されている民族が独立を求める、民族独立問題以外の何物でもない。しかもその独立要求は、世界の歴史に照らして、全く正当である。

こんなことは高校の世界史教科書を、キチンと読めばすぐに分かる。ウイグルの地・東トルキスタンが、清帝国に併合されたのは、十八世紀の中ごろである。同じトルコ系のイスラム教徒の土地で、ロシア帝国に併合されところが西トルキスタンである。ロシア帝国がそのまま共産化したソ連では、カザフスタンなど五つの構成共和国となっていた。これらの共和国は約二十年前のソ連の崩壊によって、完全な独立国となった。

西トルキスタンが独立できて、東トルキスタンが独立していけない理由など、あるわけがない。それこそが、世界史の流れ、歴史の進歩である。つまり、第二次大戦後の民族独立の時代に、歴史の流れに全く逆行し、シナ人は南モンゴル・チベット・東トルキスタンを侵略して、辛亥革命で解体した清帝国を、無理やり再建したのである。中華人民共和国は、最初から侵略国家なのだ。

しかし現在、世界はこの民族独立問題としての本質にひたすら目を瞑り、人権問題としての中共批判すら、近年ますます低調になっている。つまりチベット問題・ウイグル問題という鏡に照らしてみると、この世の中は、正義が無茶苦茶に踏みにじられている、暗黒の世界になってしまっているかが良く分かる。

その中でも、特に頭の愚かさと心の醜さを、見事に露呈してしまっているのが、我が日本国の「歴史の反省屋」たちである。彼らは今でも頻りにシナや朝鮮への侵略の過去を反省しているが、言葉とは裏腹に、実は反省など全くしていない。本当に反省しているのであれば、現実に行われている、シナ人による残酷無比な、チベット・ウイグルへの侵略を、黙って見ていられるはずがない。侵略を一日も早く止めろと、忠告しなければならない。

彼らが大好きでしばしば持ち出してくる言葉に、元西ドイツ大統領・ワイツゼッカーの、「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」というのがある。これを逆にすれば、現在に盲目なものは、過去に目を閉ざしているわけである。

しかも昨年来、侵略者・シナ人は、我が国の領土尖閣諸島を、「核心的利益」だと言明し出した。核心的利益には、チベット・東トルキスタンも含まれるから、これは我が国の領土に対する、明白な侵略宣言である。にもかかわらず、いまだに日本人はシナ人の侵略体質に対して、驚くほど警戒心が見られない。

なお天安門の事件で、「少数民族」「ウイグル族」という表現が、日本のマスコミで頻りに使われているが、これらの言葉こそ、排斥すべき究極の差別用語である。ウイグル人は、最新の二〇一〇年の人口調査では、一千六万九千三百四十六人の人口を有する。中共ではすべての民族を「中華民族」とし、その下に「~族」が存在するとする。しかし日本語では、「アパッチ族」のように部族段階の集団を「~族」というのであって、同じ漢字を使っていても「ウイグル人」と訳さなければならない。要するに「少数民族」も「~族」も、独立する資格がない存在と決めつけて、侵略を正当化するために生み出された、侵略用語なのである。それをそのまま無批判に使用するのは、シナ人に精神を侵略されているのであり、立派な精神奴隷、メンタル・スレイブである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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