- 2010年6月11日 17:26
- 時評
そもそも鳩山辞任表明演説が、実にふざけたものであった。国民が聞く耳を持たなくなったと、自己の甚だしい失政は棚に上げて、責任を他に転嫁した。特に辞任の理由にしたのが、普天間問題と政治と金の問題の二つであるが、普天間問題はとにかく、政治と金の問題は、総理大臣も幹事長も、政権担当以前からの問題であって、いまさらそれを辞任の理由に挙げること自体が、国民を馬鹿にしていることになる。そして辞めるなら、総理大臣や幹事長という役職だけでなく、国会議員そのものを辞めるべきである。鳩山元総理は、次期総選挙に出馬しないと言ったようだが、今すぐ小沢氏を道連れに、国会議員を辞めれば良いではないか。なお、この演説の中に、例の超悪質議員である小林議員の名前も出していたが、それなら北海道が地元である自分の力で、一日も早く辞めさせるべきなのだ。
ともかく政権与党の代表と幹事長が、その職を去ったことだけは確かである。しかし民主党政治の何が変わったのか。そもそも菅首相自身が、メモ用紙をヒラヒラさせながら、鳩山政治を継承すると、はっきりと言っている。鳩山内閣の閣僚も、さすがに辞退せざるを得なかった赤松農水大臣の外は、殆ど留任した。では菅首相が継承する鳩山政治とは、何だったのだろうか。その巨大な負の遺産を明確に認識することこそ、現在極めて必要だと思われる。
鳩山政治の負の遺産として、一応国内的なものと、対外的なものとを考えてみよう。まず国内的には、政治の規律・モラルが滅茶苦茶になったことである。ここで言う規律・モラルとは、政治と金と言った単純なことではない。私は、政治に金が必要なら、そんなにやかましいことを言わなくても良いと思っている。鳩山元総理の最大の犯罪は、自分の言っていることとやっていることが全く逆で、しかもそれに完璧に気付いていないことである。それは今年一月の施政方針演説に、典型的に現れている。(「鳩山白痴政権という不幸」参照)つまり正真正銘の白痴宰相である。
今までも愚かな総理大臣はいたであろうが、完全に質とレベルが違う。鳩山首相・民主党政権の出現によって、日本の政治は驚くほど本質的に堕落した。事業仕分けで異常にケチケチしながら、国防費4兆7千億円よりさらに巨大な、5兆4千億円の子供手当てと言う、究極のばら撒き法案は平気で成立させた。
対外的には、対米・対中関係において、格段と隷属度が深まったことである。鳩山政権の対外的態度は、国内政治の「コンクリートから人へ」と似ていて、「アメリカから中共へ」であった。対米関係としては、言うまでも無く普天間問題の、拙劣を極めた処理である。対米自立を目指すこと自体は誤りではないが、確たる信念や方針が無いままに、対米自立ムードで暴走し、ものの見事に失敗した。そのために却って、対米従属は強化された。
アメリカに楯突いて見せた裏返しが、中共への愛想笑いである。対中関係では、東アジア共同体は鳩山首相だったが、その外は小沢幹事長の方が主役だった。巨大訪問団を組織しての訪中、そこにおける「解放軍野戦司令官」発言、習近平来日時の天皇陛下への面会強要など、あの傲岸不遜な小沢一郎が、卑屈極まりない対中媚びへつらい外交を展開した。私は、すでに自民党政権期、安倍政権時代から、米中に対する二重の隷属体制が出来上がったと考えているが、鳩山政権はそれを更に大きく進展させたわけである。
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