Home > 月刊日本 Archive
月刊日本 Archive
中国に騙され続ける日本人の愚かさ
『月刊日本』2023年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年12月22日
10月30日、中共の江沢民元主席が死去した。93歳であった。翌12月1日の新聞各紙に詳しく報じられているが、産経新聞と朝日新聞とでは、その印象はかなり異なる。産経は一面トップの縦見出しで、「中国の反日を強化」と打ち出し、他の縦見出しでも、「96歳 経済開放 民主化認めず」「権力欲 集団体制ゆがめる」と、否定的側面を強調し、2面肩の記事で、「歴史戦 火ぶた切る」「各地に抗日記念館増設」と掲げて、さらに追及している。
一方、朝日は、1面のトップではなく肩の記事で、見出しは「江沢民元国家主席死去」「96歳 中国の経済発展推進」と地味であった。
ポイントである歴史問題は避けられず、この1面の記事での次のように述べている。「外交面では対米」関係を改善し、97年に国家主席として12年ぶりに米国公式訪問を果たした。一方、対日政策では歴史問題を重視し、抗日戦争の勝利を強調する愛国教育を強化。中国国内の反日感情を強める結果を招いた。98年に国家主席として初めて日本を公式訪問した際、宮中晩餐会で歴史問題に言及し、日本国内で反発を呼んだ」。
この記事の記述から明らかなように、「愛国教育」というのは名ばかりで、その実態は日本だけを標的とした、「反日教育」正確に言えば、「虐日教育」なのである。それはアメリカとの対比で明らかである。日本との戦争の後で、朝鮮戦争においてアメリカと戦っている。そもそも日中戦争の中国側の主役は、中華民国であって中華人民共和国は存在していなかった。また帝国主義時代に中国を侵略した最も中心的国家は、大英帝国・イギリスであるが、イギリスに対して恨みがましい非難をしたこともない。結局先に述べたように、唯一の攻撃対象とされたのがわが日本なのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
問題にすべきは旧統一教会より創価学会・公明党だ
『月刊日本』2022年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年11月22日
安倍元首相の暗殺事件以来、自民党と旧統一教会の関係が、異常なほど問題視されて、メディアはその報道に狂ったように邁進している。特に国会が開催されても、この問題ばかり議論しているのは、完全に税金のとてつもない浪費である。
最近朝日が中心となって、自民党の議員と旧統一教会との間の、「政策協定」なるものが一躍注目された。ところで宗教組織と自民党の「政策協定」と言えば、ずっと以前からしきりに聞かされていた言葉である。それはもちろん自民党と公明党との政策協定であり、公明党は野党ではなく自民党と共に、政権与党であるから、こちらの方の政策協定は、国政への影響力は真に巨大ものである。
今回、旧統一教会による自民党への選挙協力が問題にされたのであるが、ずっと以前から自民党は創価学会・公明党の選挙協力がないと、選挙で勝てなくなってしまい、ついに公明党と連立政権が成立するに至ったのである。これこそ自民党の歴史における、取り返しのつかない巨大な失策と言わなければならない。
公明党と連立したことによる弊害は多々あるが、一つは無責任に安直な平和主義を奉じていることであろう。これによって憲法の改正などまったくできずに、無為に月日を重ねることとなった。その間に中華人民共和国・中共は爆発的に軍事力を拡大して、我が国にとって明確な脅威となった。
もう一つの公明党による巨大な弊害は、この中共に関することである。そもそも創価学会は中共と関係が深く、今から50年前のいわゆる「日中国交正常化」の時点で、田中角栄総理大臣の訪中に先駆けて訪中し、その露払いを務めたのは、公明党委員長であった竹入義勝であった。公明党が中共と関係を深めるようになったのは、膨大な人口を抱える中共に、布教する目的があったからであろう。膨大な人口に目がくらんだのは、経済界と同様と言える。
その公明党が政権与党となり、国政に直接関与しているのだから、我が国にとって危険なことこの上ない。特に内閣においては、重要閣僚である国土交通大臣を占めている。しかも実に奇妙なことに、公明党がほぼ独占し続けていることである。
その中でも最も危惧されることは、国土交通省が海上保安庁の監督官庁であることである。現在、日本と中共の尖閣諸島をめぐる領土紛争は、もっぱら海上保安庁が対処しているのである。これでは海上警備を巡る我が国の情報は、公明党を通じて中共側に筒抜けとなっていると考えなければならない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
安倍元総理の暗殺を最も喜んでいるのはシナ・中共だ
『月刊日本』2022年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年10月22日
雑誌『月刊HANADA』11月号に、有本香さんの論文、「『国葬』反対派は〝極左暴力集団〟」が出ている。そこに掲載されている集会のポスターは、「安倍の国葬粉砕! 改憲・戦争の岸田を倒せ! 9.23 全国集会デモ」というもので、特に有本さんが注目しているのは、中段に書かれている、「米日の中国侵略戦争 絶対阻止!」という文言で、有本さんは「唖然として、言葉が出なかった」と言っている。
つまり日本の極左勢力は、歴史の真実とまったく逆のことを主張しているわけである。中国(正しくは、シナ、中共)は、私が以前から何度も指摘しているように、赤色ファシズム国家、侵略国家、ジェノサイド国家と、三拍子がそろった、現代に生きるナチズム国家であるから、ネオナチ国家と言わなければならない。中華人民共和国は、そもそも侵略国家として誕生したのだが、国内的侵略が一応済んだ段階で、さらの国外への侵略に乗り出した。台湾侵略は国是たが、さらに南シナ海・東シナ海の島嶼の侵略に着手して、日本の領土である尖閣諸島も、核心的利益であると侵略宣言をしている。その侵略はさらに沖縄、日本本土に及ぶのは、決まりきったことである。
つまり日本の極左勢力は、まるで民族意識というアイデンティティがなく、日本を侵略する側に立っている。共産主義のシナ・中共にしても、北朝鮮にしても、一応民主主義の韓国も、ナショナリズムそれもウルトラ・ナショナリズムの塊である。日本の極左勢力は、シナ人・朝鮮人に少しは学んだらどうなのか。現実には日本の敵の手先になっているのだから、明らかな「民族の裏切り者」といわなければなない。
また10月4日の産経新聞オピニオン面の、坂井広志論説委員による「一筆多論」欄によると、国葬の前日の9月26日、左翼活動家「プロ市民」による国葬反対大集会が、衆院議員会館の大会議室で行われた。会場の入り口付近では「中国を仮想敵国に仕立て上げて、着々と戦争準備に突き進んで良いのか」と書かれた、日中国交正常化50周年記念大集会の案内が配られ、「会場のひな壇には横断幕も掲げられ、迷彩服を着た安倍氏を背景に『やるな国葬 来るぞ徴兵 安倍賛美は改憲・戦争への道』と物騒な文言が大きな文字で書かれていた」とあるから、極左勢力の主張と、基本的に同じであることがわかる。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日本人の精神を蝕む「白痴的平和主義」
『月刊日本』2022年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年9月22日
8月11日の産経新聞・オピニオン面の「直球&曲球」欄に、登山家の野口健氏が、「『自分の国は自分で守る』覚悟と行動」と題する見出しのコラムを書いている。
まず冒頭で、「防衛省オピニオンリーダーを拝命してから、駐屯地を視察、先日、防衛省にて『令和4年版防衛白書』についてレクチャーを受けた。説明を受けて愕然とした。中国が公表している国防費の増加スピードはこの30年間で約39倍。それに対し、日本の防衛関係費は約20年間で微増。今年度の日本の防衛関係費が5兆円強に対し、中国政府が公表しているだけで国防費は約25兆円。ざっと5倍である。」と述べている。
さらに、台湾有事の際の弾薬不足や、ウクライナ戦争に対する、素早いドイツの対応などに言及して、結びの言葉は、「この手の問題提起をすると『戦争をしたいのか!』との意見が寄せられるが、ウクライナが証明しているように『まずは自分たちの国は自分たちで守る』という強い覚悟と行動がなければ、いざというときに他国からの助けも得られにくい、と心得た方がいいだろう」という。かなり控えめな言い方になっているが、まったく当たり前のことを言っているわけである。
それから三日後、8月13日の産経新聞の一面、連載記事である「主権回復」の第4部「戦争とどう向き合うか2」に実に興味深い棒グラフが掲載されている。それは、「世界価値観調査(2017~20年)の「戦争になった場合、あなたは国のために戦えますか?」である。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
地域の安定を破壊してきたのは中国だ
『月刊日本』2022年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年8月22日
アジア歴訪中のペロシ米下院議長は、8月2日に台湾に到着、翌3日午前に蔡英文総統と会談した。この下院議長の台湾訪問は、1997年以来25年ぶり。自由と民主主義を破壊続ける、ネオナチ国家・中国に対抗する強力なメッセージを発した。中国は当然のように猛反発して、台湾を囲む六つの地域で大規模な軍事演習を展開した。
このペロシ議長の訪問については、バイデン大統領も賛成していなかったが、三権分立のアメリカであるからできたのだとかなどの、理由付けが行われているが、要するに大統領が黙認したということは、承認したことに外ならない。
中国はこのアメリカの態度にショックを受け、巨大な軍事演習を始めたのだが、ペロシ訪台に強硬に反対し続けた、習近平のメンツが丸つぶれになったことは、紛れもない事実である。隷中の朝日新聞ですら、3日朝刊1面で「訪問の中止を米側に再三警告してきた中国はメンツをつぶされた形で、米中対立がさらに深刻化する見通しだ」と述べているのだから、間違いない。
直接日本に関係することとしては、4日にカンボジアのプノンペンで予定されていた、日中外相会談が一方的にキャンセルになり、さらに翌5日のアセアン外相会議では、林外相の演説中に、中国とロシアの外相がそろって退席するという、卑劣なパフォーマンスを演じた。
5日の朝日新聞2面の「時時刻刻」欄によれば、このキャンセルについて、中国の「華春螢外務次官補は、同日の定例会見で『このような状況下で日本と外相会談を行う必要はない』としたうえで『台湾問題について日本は歴史的な罪を負っており、とやかく言う資格はない』と強く非難した。」という。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日中国交50年・歴史問題40年を、負の遺産として記憶せよ
『月刊日本』2022年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年7月22日
最近はコロナ騒ぎの上に、ウクライナ戦争も勃発して、殆ど忘れられた状態になっているが、本年2022年は、日本が中華人民共和国と国交を成立させてから、50年となる節目の年であった。
アメリカはベトナム戦争で行き詰まり、一方中共は文化大革命の混乱が継続中だったことにより、米中の接近が計画され、1971年のキッシンジャー訪中となった。その下準備の上で、72年2月にアメリカ大統領ニクソンの訪中が実現した。
このニクソン訪中に驚いたのは日本で、ちょうど沖縄返還を置き土産に引退した、佐藤栄作の後継を争う自民党総裁選挙で、以前から日中関係改善に熱心であった、田中角栄が福田赳夫を破り総裁となった。ただしこれにはメディアの応援が大きかった。特に朝日新聞は、国交成立以前の記者交換の時代に、文革報道で唯一追放を免れたが、それは中国に都合の悪いことは報道しないと言う、広岡知男社長の「歴史の目撃者論」の成果であった。
田中総裁は7月5日に誕生し、翌々日には田中内閣が成立した。以後、急速に中国との交渉が進展したが、そこには公明党の竹入委員長の訪中が関与していた。田中首相は、9月25日に訪中して、国交を成立させて同29日は共同声明が出された。驚くべき拙速外交の見本と言うべきもので、その後に巨大な禍根を残すことになった。ちなみにアメリカが中国と国交を成立させたのは、はるかにのち1978年12月のことである。
その後、「日中友好」のスローガンが、声高に叫ばれて、政府は巨額のODAを提供するようになり、それは主に中国の交通設備などインフラ整備に投入されていった。その分中国は自国で賄わなくてもよくなり、その資金は結局軍備に投入されて、世界第二の軍事大国に成長していったのである。つまり日本はお金を出して、わざわざ敵国を育ていったのであり、自身で日本の危機を招来していたわけである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日本のリーダーたちは、国家意識・民族意識を喪失した
『月刊日本』2022年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年6月22日
5月25日、JR東海の名誉会長・葛西敬之氏がなくなり、27日に公表された。翌28日の各紙朝刊には、死亡記事と「評伝」が掲載されている。その活動は実に多彩で、国鉄民営化を実現した中心人物であるとともに、東海道新幹線の発展を推進しただけでなく、原発事故後の国の原子力関係の委員なども務め、若者の教育にも熱心であった。
その中でも葛西氏が優れていたのは、精神的なバックボーンが極めてしっかりしていたことである。各紙に共通して見られるのは、同氏と親しかった安倍元首相が「国士」と述べたことと、「保守派の論客」と言う表現である。
毎日の記事によると、JR東海が死去を受けて出したコメントには、「国鉄改革の主柱として、JR東海の発展のけん引者として、曲げない信念と卓越した実践力を持ち合わせた人だった。確固たる国家観、世界観を持ち日本の発展に心を砕いていた人でもあった」と述べているところが、重要なポイントである。
この葛西氏の国家観が端的に表れているのが、新幹線に関する信念である。産経の評伝では、「そして卓越した国家観を持った経営者でもあった。国鉄の民営化では日本の鉄道の将来を憂え、民営化の実現に奔走した。その後、自らリニア中央新幹線計画を主導したのも、大地震で東海道新幹線が被災した際の影響を憂慮したからだ」とあり、続けて「新幹線の技術を海外に売り込む際、当時の財界内で要望が強かった中国への技術移転には強く反対した。中国への技術流出を懸念したからだ。ビジネスの前に国の安全保障の姿をいつも考えていた」とある。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
ナチスを強大にしたのは、共犯者であるソ連・ロシアだ
『月刊日本』2022年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年5月20日
ロシアのプーチン政権による、対ウクライナ侵略戦争において、5月9日の対独戦争勝利の日が話題になった。現在では革命記念日に代わって、ロシアにおける最大の祝日になっており、それをしたのがプーチン大統領であるという。
ソ連が戦った第二次世界大戦において、ソ連の対独戦争を一般には「独ソ戦」と言うのであるが、ソ連・ロシアでは「大祖国戦争と」呼ぶ。これはナポレオンのロシア遠征を撃退した戦争を、「祖国戦争」と呼ぶことに倣ったものである。
この大祖国戦争はいつ開始されたものかと言えば、1941年6月に、ドイツがソ連に対する攻撃を始めてからである。つまり1939年9月1日に、ヒトラーのナチス・ドイツがポーランド侵略を開始したことによって、第二次世界大戦がはじまったが、あくまでもヨーロッパ中心に考えるから、その前に始まっていた日中戦争は含まないわけである。
ヒトラーはポーランドを侵略するにあたって、その直前39年8月に、ソ連との間に独ソ不可侵条約を結んだ。当時の日本の総理大臣であった、平沼騏一郎が「欧州の情勢複雑怪奇なり」と言って、総辞職した原因となった条約である。その一年半後に、ドイツがこの条約を廃棄して、独ソ戦争が始まったわけである。
この39年9月から41年6月までの間に、ドイツはポーランドを降伏させただけでなく、翌40年4月には、デンマーク・ノルウェーを攻略し、5月にはオランダ・ベルギーの中立を無視して、マジノ線を突破してフランスに攻め込み、6月14日にはパリが陥落して、同25日はフランスはドイツに降伏した。このように西部戦線を一応片づけたうえで、対ソ戦争に踏み切ったわけである。
ではこの間にソ連は何をしていたのか。ソ連はドイツと不可侵条約を結んだのであるが、これには秘密協定が付いていて、ポーランドを独ソ両国で占領するというものだった。これが名高いポーランド分割である。ソ連は39年11月にはフィンランドに進撃して戦争になるが、弱小国フィンランドの意外な抵抗にあって苦戦する。40年6月にはルーマニアから、ベッサラビア・北ブゴヴィナ地方を奪い取る。7月にはバルト三国を併合する。つまりソ連は独ソ開戦以前に、これだけの侵略行為を行っていたわけである。
今回のウクライナ侵略戦争において、プーチンは戦争目的として、ウクライナのナチス勢力の掃討を掲げ、現代ナチスとの戦いを強調して、その理屈に沿って、二次大戦におけるソ連によるナチス撲滅の功績を、最大のセールスポイントとする。しかし、独ソ戦争の期間はともかく、大戦の前半期間においては、ソ連はナチス・ドイツと完全に共犯関係にあったことは、否定しようのない事実である。つまりソ連は、ナチス・ドイツを強大化させるために、絶大な貢献をしたのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
遠慮・忖度の翼をロシアにまで広げる朝日新聞
『月刊日本』2022年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年4月22日
バイデン米大統領は、三月下旬4日間の訪欧の締めくくりとして、26日ポーランドのワルシャワの旧王宮で演説を行ったのだが、これが問題にされ批判された。演説の結びで、プーチンに「この男が権力の座にとどまり続けてはいけない」と言った点であり、朝日も産経も見出しにしている。この言葉はロシアの体制転覆を目指したものだから、軽率で言いすぎだというわけである。この言葉については、ロシア側が直ちに強く抗議しただけでなく、アメリカ側の高官も、政権交代を迫るものではないと釈明した。なおこのフレーズは、演説の原稿にはなく大統領のアドリブであったと説明されている。そしてバイデン大統領自身も、27日ワシントンの記者会で、体制転換を求める意思がないことを言明した。この展開に、アメリカの劣化ぶりがよく表れている。
朝日28日3面の記事によれば、「バイデン氏は演説で批判の矛先をプーチン氏個人に集中させた。『ロシア国民は我々の敵ではない』と呼びかける一方で、『非難されるべきはウラジミール・プーチン。以上だ』と言い切った。バイデン氏は最近、プーチン氏への個人批判を強める。この日の演説前には『虐殺者(butcher)だ』とも非難した。侵略開始後は『人殺しの独裁者』『真の悪党』『戦争犯罪人』といった言葉を公の場で相次いで使っている」とある。バイデン大統領が、攻撃対象を個人に集中させたのは、体制転覆の意図をカムフラージュするためと考えるのは、やはりうがちすぎだろう。
このバイデン発言問題を、さらに否定的・批判的に追及したのが朝日新聞である。3月30日7面の記事では、「バイデン米大統領がロシアのプーチン大統領について『権力の座にとどまり続けてはいけない』と発言した問題が波紋を広げている。(中略)バイデン氏は『憤りを表現した』『個人的な感情だった』と釈明し、プーチン政権の体制転換の意図を否定したが、大統領の資質を問われかねない事態となっている」と言う。
そして「いくら個人的な『憤り』を表明したと釈明しても、米国はプーチン政権の態勢転換を狙っていると受け取りかねない今回の発言は、ロシアの攻撃をさらに激化させかねないリスクをはらむ」と言い、さらに「バイデン氏は最近『人殺しの独裁者』『悪党』『戦争犯罪人』『虐殺者』とプーチン氏への非難を強めていた。バイデン氏の発言は台湾の事例も含めて緊張関係にある中ロを強く刺激し、事態をあらぬ方向へと導きかねない」とまで言うのである。台湾にまで言及して、あらぬ方向とは一体何なのか。まことに隷中朝日らしい言い分で、中国だけでなくその御仲間のロシアにまで、遠慮・忖度の翼を広げているようである。意味不明な、無責任な言い方であり、単に不安をあおっているだけである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
世界中が非難するロシアの侵略 世界中が目を瞑った中国の侵略
『月刊日本』2022年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年3月22日
2月24日、プーチン・ロシア大統領は、とうとうウクライナに対する侵略を開始した。侵略を正当化する根拠としては、いろいろあるが、このところ強調されているのは、「歴史」である。そこで出てくるのは、かつてキエフを首都とした、「キエフ公国」であり、それは「キエフ・ルーシ」と呼ばれて、ロシアの起源とするものである。したがってロシア民族とウクライナ民族は、単なる兄弟民族にとどまらず、一体の実質的な同一民族であるとの主張である。
この主張をプーチンは、すでに昨年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的な一体性について」と題する論文を公表しており、25日の朝日の2面・7面の記事によれば、「我々の精神的、人間的、文化的絆は一つの起源にさかのぼる」、「真のウクライナの主権は、ロシアとの協力関係の中でのみ可能になる」などと述べているという。
侵略を正当化する理由として、「歴史」を利用すると言えば、すぐに想起するのは、中華人民共和国・中共の場合である。歴史の中でも民族的同一性を根拠とするのが特徴である。中共の場合は、民族概念そのものを二重構造にしておいて、個々の民族は下位の民族であり、その下位の民族のすべてを統合する民族概念として、「中華民族」概念を設定する。したがって下位の民族の表現を、「~人」ではなく意図的に「~族」と表現する。族と言う表現は、普通にはまともな民族や国家を形成できなかった、部族的な段階の人間集団を表す。アメリカインディアンの「アパッチ族」や、極めて原始的な生活をしている、アマゾン川の奥地の「ヤノマミ族」と言ったようにである。したがって族というのは、侵略を正当化するために作られた、侵略用語であり、究極の差別用語であると言わなければならない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
自主憲法制定を熱望した政治家・石原慎太郎
『月刊日本』2022年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年2月22日
2月1日に石原慎太郎氏が亡くなった。作家であり同時に政治家でもあった、石原氏の多彩な活動については、2月2日の各紙朝刊に報じられている。高齢なためか、事前に予定稿が準備されていたのだろう、その記事はかなり詳しい内容であった。中でも産経新聞が特に詳細であったのは、その論調から言っても当然のことであった。
その際に産経が石原氏の活動の中核と指摘しているのが、憲法改正問題であった。それをよく示しているのが、2日一面中央に掲載された、内藤慎二記者による一文である。比較的まとまっていると思われるから、以下に紹介しておくことにする。
見出しは「自主憲法こだわった政治家人生」あり、冒頭部分は、以下のように述べられている。「石原慎太郎氏の政治家人生は憲法を抜きにして語ることができない。『日本は国家としての明確な意思表示ができない去勢された宦官のような国家になり果てている』。平成7年、議員在職25年の永年表彰でこう嘆いて辞職しながら、東京都知事を経て、80歳で24年に国政に電撃復帰。その理由については周囲に『自主憲法制定を実現するためだ』と説明していた」。
さらに中段には「周囲をあっと驚かせる言動ばかりが目立つが、背骨として貫かれていたのは『自主憲法制定』だった。石原氏が好んで使ったこの表現は、『憲法改正』よりも抜本的かつ能動的なニュアンスがある。そこからは、現実的な感覚として骨身に刻み込まれた敗戦国の悲哀が透ける」として、東京裁判を傍聴にいって、進駐軍の憲兵に怒鳴られた経験が紹介される。
末尾では、石原氏がたびたび指摘していた、憲法の文章の助詞の誤用に対する違和感に及び、そこに政治家と文学者の結合を見ている。
ところで産経は実に数多くの石原発言を紹介しているが、私が石原氏の言葉として最も印象に残るのは、先に引用した「去勢された宦官のような国家になり果てている」という発言である。その言葉が発せられた平成7年は1995年だから、阪神淡路大震災の年であり、それから27年もたっている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
岸田政権の北京冬季五輪への「玉虫色」の対応は歴史的大失策だ
『月刊日本』2022年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2022年1月22日
2月4日から北京冬季オリンピックが開始されるが、それに先立ってかねてから予想されていた、アメリカによる外交ボイコットが、12月6日に正式に表明された。ところで日本の岸田政権の対応はどうだったかというと、思った通りもたもたと逡巡して、方針を明らかにしたのは、12月24日になってからであった。
この経緯は、25日朝刊の朝日新聞「時時刻刻」欄に詳しい記事があり、 その記事のリードに、「政府は24日、北京冬季五論・パラリンピックに政府関係者を派遣しないことを表明した。同盟国・米国と足並みをそろえた事実上の『外交ボイコット』だが、中国にも配慮して、その言葉は使わず、理由も人権問題に言及せず『総合的な判断』と強調。米中双方の顔を立てたかっこうだ」とあり、要点がまとめられている。
表明は官房長官の記者会見でまず発表された。出席する人間は、あくまで国際オリンピック委員会からの招待であることを強調し、また派遣しない理由としては、人権問題を出さずに、「総合的に勘案して判断」した結果であると述べて、「外国ボイコット」という文言も使わなかったという。朝日ですら見出しで、「玉虫色」と表現するほどで、この問題に対する首相の極めて消極的な態度が、良く表れていた。
朝日は「日米双方の顔を立てた」と述べるが、この首相の判断で喜んだのは、もちろん中国の方であった。この記事では「中国外務省の趙立堅副報道局長は24日の定例会見で、『中国はJOCなどの関係者や日本選手が北京冬季五輪に参加するため訪中することを歓迎する』と日本を評価した。米英豪加の外交ボイコット決定時に『そもそも招待していない』などと突き放した対応とは、明らかに異なる」と説明されている。
この問題に関する朝日新聞の社説は、翌26日に出ている。冒頭近くで「粘り強い対話の努力とバランスのとれた賢明な外交が不可欠だ」と述べているから、「米中双方の顔を立てた」とする今回の岸田外交には、大いに賛成であるに違いない。ただしあまり絶賛することもできないので、「ただ、中国への配慮からか、その理由についてはあいまいな説明に終始している」、「しかし、香港の民主主義の弾圧や新疆ウイグルなどの問題に具体的に言及することはなかった」と一応不満な点を指摘するが、言うまでもないが、強い批判はあるわけがない。
これに対して、産経新聞の社説(主張)は、25日付けで直ちに出されており、これは朝日の社説と異なって、岸田政権の判断を、はっきりと正面から批判している。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
中国に一方的に利用され、最大の敵国に育てた愚かな日本
『月刊日本』2022年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年12月22日
12月1日、安倍元首相は台湾のシンクタンクが主催する、シンポジウムにオンライン参加した講演で、「台湾の有事は日本の有事であり、日米同盟の有事でもある」と、明確に発言した。2日の産経の記事によると、「台湾各紙は同日、電子版などで安倍氏の講演の詳細を大きく伝えた」とある。同日の朝日の記事の末尾には、「安倍氏の発言を受けて、中国外務省報道官は1日の定例会見で『強烈な不満と断固たる反対』を表明。『外交ルートを通じ厳正な申し入れをした』と、強く反発した」とあって、産経と朝日の報道姿勢の違いがよく出ている。
中国が安倍氏の講演に対して、神経をとがらせたは、台湾をめぐる国際情勢の各種の変化が原因であることは言うまでもない。その代表的なものが、アメリカ議会議員による台湾訪問である。それについては、12月3日の朝日新聞朝刊が、総合面と国際面の両方で報道している。そこには訪台議員の中心人物である、マイク・タカノ民主党下院議員に対する、朝日新聞のインタビューが載っている。同氏による、民主党と共和党では訪問目的が違い、民主党は民主主義で共和党は軍事だとの説を紹介するが、そのすぐ後で、台湾に対するいじめや不公平な競争に反対する点では一致していると書かれているから、結局はおなじである。
この記事には朝日らしく、中国側の言い分が比較的詳しく述べられている。その朝日でさえ、アメリカは台湾を軍事防衛することを明言しない曖昧戦略をとってきたが、「米国の台湾防衛は『公然の秘密』となっているのが実情だ」と書かざるを得ないのは注目すべきである。
さらにアメリカは12月9日・10日に、オンライン形式による民主主義サミットを計画している。このサミットの具体的な成果については、本稿の作成時点では確認できないが、世界の110の国と地域が参加する予定で、台湾は招待されているが、中国・ロシアは招かれていないところがポイントである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞の政権へのネガティブキャンペーンの失敗
『月刊日本』2021年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年11月22日
10月31日に四年ぶりの総選挙が行われ、事前の予想に反して自民党が健闘し、安定多数を維持した。この選挙に関しては、朝日新聞は政権へのネガティブキャンペーンを展開し、立憲民主党と共産党の共闘を応援していたが、その期待に反した結果となったわけである。その無念ぶりは11月1日朝刊の見出しに典型的に表れていた。
まず1面では、黒字白抜きの横型の大見出しで、「自民伸びず 過半数は維持」とあり、縦見出しでは「立憲後退 共闘生かせず」とある。初めから自民の大幅減少が予想されたのであるから、「伸びず」は明らかに意図的にごまかした表現である。なおこの横見出しはデジタル版では同じ16刷りなのに、「自公、290議席超す」と変えられている。
2面の大きな横見出しは、「自民苦い再出発」で、縦見出しでは「幹部、相次ぎ選挙区落選」、「首相笑顔なく『信任された』」とある。予想外の議席を獲得できたのだから、「苦い再出発」であるはずがない。「首相笑顔なく」とあるが、そこに掲載されている写真の首相は、大笑いしているわけではないが、かすかに微笑んでいるようにみえる。
朝日がまったく歓迎しない、自民党の健闘が起きてしまったために、朝日の報道の焦点は、議席の数よりも、「幹部、相次ぎ選挙区落選」の方となる。それに関して、11月1日の社説「岸田政権、継続へ」では、「世論調査などで、安倍・菅路線からの転換を求める声が多いなか、森友・加計・桜を見る会といった『負の遺産』の清算に後ろ向きな姿勢も影響しただろう。疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、『政治とカネ』の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない。首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ」と述べている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
政権交代を機に公明党が独占する国土交通大臣ポストを見直せ
『月刊日本』2021年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年10月22日
自民党新総裁に岸田文雄氏が選出された。菅前首相が自ら辞任したためである。菅氏はメディアの権力によって、辞任に追い込まれたと言ってよい。菅氏はコロナ問題において、ワクチンの接種など、それなりに成功を収めていたにも拘わらず、朝日をはじめとする主流メディアは、成果を全く認めずに徹底的に批判した。それはまさに誹謗・中傷に満ちたものであったといえる。それによって内閣支持率は急速に下落して、首相の地元である横浜市長選挙まで、大敗を喫した。ショックを受けた首相は、自ら迷走を繰り返して、辞任のやむなきに至った。
オリンピック・パラリンピックの開催においては、、主流メディアの中止大キャンペーンにも拘わらず、これを実際に遂行した。ただし残念なことは、無観客開催にしてしまったことである。そのためチケット収入が消し飛んで、大幅な赤字を生み出すことになった。この点は、頑張り切れなかったわけである。
それによって日本が優勝したソフトボールも野球も、日本人は直接に観戦・応援することができなかった。オリンピックが終わると、プロ野球は公式に開催されて、多くの観客が観戦している。その人数は新聞のスポーツ欄に明記されている。無観客となったパラリンピック期間中も、そこには数千人から一万人を超える数字が示されているのである。
菅政権は短期間に各種の実績を挙げたが、反対に大きな失策も犯した。その代表的な例は脱炭素問題に関する、無謀な公約である。温室効果ガスを、2030年までに、13年比で46パーセント削減、2050年には全廃するというもので、これには大いに疑問が提出されている。そうなれば現在の日本で唯一の基幹産業である自動車産業に大打撃を与えて、日本は完全に没落するという。杉山大志氏など多くの論者が、口を酸っぱくして主張している。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
戦争犯罪・責任を少しも反省しない朝日新聞
『月刊日本』2021年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年9月22日
8月15日は終戦の日であるが、朝日新聞の日曜日のコラム「日曜に想う」は、編集委員・曽我豪の担当であった。そのタイトルが「終戦とはごまかしのことばだ」とあるのが目を引いた。終戦記念日のコラムのとしては、なかなか興味深いタイトルといえるだろう。
このコラムはまず冒頭で、「76年前の今日は終戦、いや、敗戦の日である。その事実をただちにごまかさず国民へ訴えようとした首相がいた」という。その首相は誰かというと、続けて「1945(昭和20)年8月17日、太平洋戦争を終結させた鈴木貫太郎首相の後を襲って陸軍大将で皇族の東久邇宮稔彦王が首相に就任、初閣議を開く」とあるように、その首相とは東久邇宮首相である。そしてその閣議の様子を以下のように説明している。
「初閣議では、国民に向け『今後に対処する覚悟』と題した声明を出すことが決まる。元朝日新聞副社長で今の官房長官にあたる内閣書記官長に就いた緒方竹虎氏が自ら原文を起草したが、そこに『終戦』の言葉があった」。
続けて「『終戦とはごまかしのことばだ』と断じたのが首相である。『いたずらに国民の覚悟を弛緩せしめるだけだ。これは敗戦の事実を認めてよろしく〝敗戦〟とすべきだ』と言葉の修正を求めた」。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞の人権問題に関するダブルスタンダードを許すな
『月刊日本』2021年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年8月22日
五輪開催に反対して社説を出した朝日新聞は、五輪が実際に始まった7月21日の一面トップで、「東京五輪 きょう競技スタート」の見出しで記事を出した。それだけでは気が済まなかったのであろう、その下に横見出しで「前例なき五輪 光も影も報じます」と題した、ゼネラルエディター兼東京本社編集局長・坂尻信義の名前による一文を、わざわざのせている。
そこでは「無謀な続行は、五輪の精神にもとります」、「パンデミックのさなかに再延期や中止を選択しなかったことの是非は、問われ続けます」と嫌味を言い、「私たちは開催期間中、コロナ下での開催に必要な準備がなされ、実践されるのかを丹念に取材します。五輪が感染状況や市民生活にどのような影響を及ぼし、後世に何を残すのかについても、目をこらします」と凄んでいる。
したがってその後、一面トップに五輪の記事はほとんど掲載されず、出したとしても、否定的な情報である。その典型が開会式当日、7月23日のもので、見出しは「開会式演出 小林氏を解任」「過去にユダヤ人虐殺揶揄」となっているように、開閉会式のディレクターである小林賢太郎の解任問題であった。同氏が20年以上以前のコントで、ユダヤ人のホロコーストを揶揄する、表現を使っていたというのが、その根本的な理由であった。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
プーチンの下で、ソ連に先祖返りしたロシア
『月刊日本』2021年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年7月22日
7月3日の朝日新聞国際面に、ロシアに関する重要記事が出ている。7月1日に、プーチン大統領は、第2次世界大戦でのソ連の行為を、公にナチスドイツと同一視することを禁止する法改正に署名したという。
その法改正とは、「第2次世界大戦時にソ連指導部やソ連軍が行った決定、行為をナチスドイツや欧州の枢軸国指導部のものと同一視することを禁止。『ナチスドイツの壊滅に果たしたソ連国民の決定的な役割』を否定する見解を表明することも禁じる」というものである。
第2次大戦において、ソ連が戦った戦争には、性格の異なる二つの期間が存在することは、紛れもない事実である。前半の戦争においては、ドイツと秘密議定書にもとづいて、39年9月、ドイツが西からポーランドを侵略すると、ソ連は東からポーランドを侵略し、その後バルト三国を併合した。ドイツは東部戦線が一応落ち着くと、今度は西に転じて40年5月オランダ・ベルギーの中立を踏みにじって、フランスに攻め込み、たちまちパリを陥落させて、全土を占領してしまう。フランスを支援したイギリスは、ドーバー海峡に追い落とされる。
さらに西部戦線が落ち着くと、ドイツは不可侵条約を破って、41年6月、ソ連攻撃に乗り出す。ソ連・ロシアで、第二次大戦を表す「大祖国戦争」とは、この時から終戦までを指すのであり、前半部分は全く含まれない。それ以前においては、ソ連は明らかにナチスの共犯者なのである。日本が三国同盟を結んでいたからと言って、ナチスと同一視されるのであるが、この時期に関して、ソ連をナチスと同一視することは、まったく正しい。「大祖国戦争」と限定することは、ソ連・ロシア自身が、前半部分は回顧したくない負の歴史と、思っていたからである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
世界情勢の変化によって再び注目される 「自由で開かれたインド太平洋戦略」
※このタイトルは編集者によるもので、正確には「安倍政権の媚中外交」とあるべきです
『月刊日本』2021年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年6月22日
朝日新聞に安倍政権を回顧した、「未完の最長政権」が連載されている。5月23日に始まった第3部は「外交」で最初の三回は対中外交である。23日1面トップの見出しは「書き換えられた対中親書」とあって、なかなか魅力的である。
それは如何なることかと言うと、対中安倍外交には大きな転換点があって、それが2017年5月の、二階幹事長が訪中した際に託した、首相の親書が書き換えられた時だ、と言うわけである。2012年末に始まる第二期安倍政権では、中国に一貫して厳しい姿勢を見せていたが、これを転機として宥和的姿勢に変節したというわけである。
二階が出席したのは「一帯一路」国際会議で、「訪中には経済産業省出身で、安倍側近の首相秘書官、今井尚哉が同行。習と対面した二階は『ここで読んでください』と笑顔で親書を手渡したという。親書には、中国の一帯一路を評価する内容が記されていた」。
これに対して怒ったのが谷内正太郎だった。「中国に渡った親書の内容を知った国家安全保障局長の谷内正太郎は愕然とした。自らまとめた原案から大幅に書き換えられていたからだ。安倍に面会を求め、詰め寄った」。安倍は「僕もどうかなと思ったんだけどね」ととぼけたという。そして結局、書き換えは黙認された。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
デタラメばかりの バイデン大統領の対中政策
『月刊日本』2021年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年5月22日
バイデン大統領は、就任100日を迎える前日に、やっと4月28日に施政方針演説を行った。他の大統領の場合、とっくに行われていたものである。その評判は良好のようだが、アメリカメディアは大統領選のときから、明らかにバイデン支持であり、したがってその高評価は完全に予想できた。日本のメディアはアメリカメディアの受け売りであるから、日本での高評価も当然である。
バイデン演説で最も注目されたのは、中国に対する厳しい姿勢を貫くという点であり、日本の保守派も安心しているようであるが、私にはとても楽観的に見てゆくことはできない。それはこの演説以前から、中国へ厳しい姿勢をとることは逆に、あたかもその代償のように、気候変動問題とコロナ問題の二つについては、中国と協調して行く方針が言明されていたからである。
しかしこれは全く筋の通らないことである。中国の二酸化炭素の排出量は、世界全体の約三分一で、第二位のアメリカの二倍、日本の十倍である。コロナ問題については、単にウイルスの発生源であるだけでなく、それを意図的に世界中にばら撒いたのであるから、完全な人災を超越した、習近平によるテロ行為である。
気候変動問題については、早くからケリー特使が中国に派遣されて、秘密で交渉が行われていた。そして4月22・23日、アメリカの主導によって、オンラインによるサミットが開催されて、我が菅首相が参加しただけでなく、習近平とプーチンもアメリカの招待によって参加した。排出制限については、日本は不利な約束をさせられたようだが、肝心な中国については、一向に明確な約束が説明されない、極めて怪しげなものであった。
コロナ問題については、アメリカと中国との間で、いかなる交渉が行われているのか、気候変動問題以上に、一向に聞こえてこない。バイデン大統領が先の演説で、最も強調して自慢したのは、ワクチン接種による感染の抑え込みに成功を収めていることであった。しかしアメリカにおけるワクチン開発は、トランプ大統領の主導のもとに、急速に進められたものであり、トランプ大統領の功績を、丸々盗んだものであると言って良い。反トランプのアメリカメディアは、この点も全く無視するようである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
経済覇権戦争の道具と化した「脱炭素」
『月刊日本』2021年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年4月22日
菅首相が環境問題で、2050年までに二酸化炭素を実質的にゼロにするとの公約を宣言した。これは以前から大流行している、地球温暖化を糾弾するムーブメントに便乗したものであるが、それに対して疑問視する見解も目立つようになってきた。その意見を積極的に主張している人物として杉山大志氏がいる。同氏はキャノングローバル戦略研究所の主幹で、環境問題の専門家である。氏が気候問題、温暖化問題の隠された背景を、かなり率直に説明した文章として、2月22日の産経新聞の「正論」欄があるので、その要点を紹介しよう。タイトルは「気候危機はリベラルのフェイク」とある。
冒頭で「台風等の災害のたびに温暖化のせいで激甚化と騒ぐ記事が溢れるが、悉くフェイクである。温暖化云々以前に、そもそも激甚化自体がなかったことは公開の統計で確認できる。(中略)ではなぜフェイクが蔓延したか。政府機関、国際機関、NGO、メディアが不都合なデータを無視し、プロパガンダを繰り返し、利権を伸長した結果だ」と、危機は捏造されたものだと断定する。
次いで「CO2をゼロにするという急進的な環境運動は今や宗教となり、リベラルのアジェンダ(議題)に加わった。人種差別撤廃、貧困撲滅、LGBT・マイノリティーの擁護等に伍して、新たなポリティカル・コレクトネスになった。CO2ゼロに少しでも疑義を挟むと、温暖化『否定論者』というレッテルを貼られ、激しく攻撃される。この否定論者(デナイアー)という単語は、ホロコースト否定論者を想起させるため、英語圏では極悪人の響きがある」と現在世界的に流行している、リベラル派のポリティカル・コレクトネスの運動では、否定論はかなり悪質と認識されていると説明する。
その際、「日本のNHK、英国のBBC、ドイツの公共放送、米国のCNN等の世界の主要メディア、そしてフェイスブック等の大手SNSもこの環境運動の手に落ちた」と、とりわけ新旧メディアの影響力に注目している。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日米主流メディアの腐敗と堕落
『月刊日本』2021年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年3月22日
今回のアメリカ大統領選挙に関連して、1月6日のアメリカ議事堂への乱入事件をもって、アメリカの民主主義が大きく傷ついたかのような言説が、日本でも盛んであるが、本当にそうだろうか。
この事件はトランプ大統領の煽動によって引き起されたとされるが、そうだとしても一番の疑問は、なぜ「暴徒」がやすやすと侵入できたかである。客観的な状況から言って、警備を意図的に緩めていたと考えても、まったく不思議ではない。
またこの事件で数人もの犠牲者が出ている。しかしこの犠牲者について、ほとんどと言って良いほど報道はない。一人は警官で、この警官については慰霊式が行われたが、他の人間はトランプ側なのであろう。したがって詳しい情報は、意図的に出さないのである。このうち一人は女性で、明白に警察の銃撃で殺されたのだが、初期に簡単に報道されただけである。
例のミネアポリスの、警官の警備で窒息死した黒人男性については、その名前はもちろん現場の映像まで、何度も繰り返して報道されたのと、なんという違いであろうか。「暴徒」であろうとなろうと、犠牲者に関して客観的な報道が行われるべきだが、まったく隠蔽されてしまった。
黒人の事件の場合は、それによって人種差別反対運動が、「ブラック・ライブズ・マター」として異常に盛り上がって、数々のそれこそ本格的な暴動が発生して、甚大な被害を与えたのだが、こちらの暴動の方は全く問題にしない。甚だしいダブルスタンダードを通り越した、巨大なデタラメであると言って良い。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
習近平によるバイオテロ
『月刊日本』2021年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年2月22日
1月末から、やっとWHOの調査団が武漢で調査を始めている。メディアはそれによって発生源が判明するかもしれないと報道しているが。判明するようなことは、絶対にあるはずがない。そこでメディアも中国側の対応次第だと、お茶を濁しているわけである。
そもそもコロナウイルス問題の、この一年間の経緯を客観的に振り返ってみれば、WHOは完璧に中国側の支配下に置かれてきたことは、あまりにも明らかである。去年の1月23日、中国は1000万人都市武漢を封鎖したが、この時同時にスイスのWHO本部では、緊急事態宣言を出すべきか否かを協議していた。しかし22日の会議でも翌23日の会議でも、意見はかなり対立していたが、結局両日とも見送られた。
原因は武漢封鎖が断行されていたにもかかわらず、中国側が強行に反対したからである。その理由は緊急事態宣言に基づいて、中国との人や物の移動を規制する勧告が行われると、中国の経済に大打撃を与え、中国の威信が傷つくからであった。なおこの時、委員会の委員長がフランス人であったので、習近平はフランスのマクロン大統領と電話会談して、配慮を求めた。結局、WHOによる緊急事態宣言は、1月30日になってやっと出されることになった。
ただし、ここで驚くべき犯罪的な宣言が出されたのである。それは宣言が出されたのは出されたのであるが、中国が恐れていた人と物の移動を規制する勧告は、なされたかったのである。つまり緊急事態宣言は、まったくの骨抜きだったのである。この直前1月28には、テドロスは習近平に呼びつけられて北京に行き、習と会談しているから、習から命令された結果であることは、疑問の余地がない。以上の事実は、朝日新聞が1か月後の去年2月23日に報じているが、雑誌『Hanada』4月号に載った遠藤誉論文によると、電話会談の相手はドイツのメルケル首相も含まれていた。
したがって、この宣言以後も中国からの春節観光客は、世界中に出て行って、コロナウイルスをまき散らした。WHOがパンディミック宣言を出したのは、さらにずっと後の3月11日であり、習近平が封鎖後初めて武漢を訪れた、3月10の翌日であったのは、中国をパンディミックの地としないための、あまりにも露骨なやり方であった。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
コロナ問題で大勝利を収める中国
『月刊日本』2021年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年1月22日
中国はコロナ問題とそれに連動したアメリカ大統領選挙において、実に巨大な勝利を収めることができた。習近平は腹を抱えて、大笑いしていることであろう。
中国はコロナ問題という明確なバイオテロによって、戦争もせずに、全世界に対して、巨大な打撃・損害を与えることに成功した。特にいままで世界の覇権を握っていたアメリカが、莫大な被害を生み出したことは、生命や経済の損失にとどまらず、アメリカの威信が大きく傷ついたことを意味している。
しかもそれが大統領選の時期をちょうど重なり、民主党側がメディアと一体になって、アメリカのコロナ被害を、一方的にトランプの責任に押し付けて、トランプを落選させたことは、中国にとって予想以上の大戦果といえるだろう。
というのは、トランプ大統領も就任当時は、中国を批判する姿勢を示していなかったが、まず貿易問題という経済から、中国に対する攻勢に乗り出し、特に末期には明確に中国の存在を正面から否定する政策を打ち出すに至った。
つまりトランプ大統領は、共和党・民主党を問わず、従来のあまりにも間違ったアメリカの対中政策を、根本的に転換する意向を宣言したわけである。約30年前、「悪の帝国」ソ連が崩壊した後、単独覇権国となったアメリカは、残る共産主義の主要国家中国を崩壊させるという重大な使命を忘れて、中東にのめり込んで行き、そのために無駄な30年を浪費した。その間に中国は経済建設に邁進して、世界第二の経済大国となり、その成果を軍備に投入して、世界第二の軍事大国になりおおせた。それによって、「覇権を求めない」という言葉とは裏腹に、覇権追及国家の本性をむき出しにして、尖閣まで核心的利益と言うようになった。
トランプ政権に至って、ようやくアメリカは本来の自己の使命に目覚めたのである。これは中国にとって、建国以来最大の危機であると言って良い。しかしこの危機は、コロナ問題とトランプ落選によって、完全に回避された。次期バイデン政権は、明らかにトランプ路線を継承しないに違いない。オバマ政権の副大統領時代に、バイデンが中国と極めて密接な関係にあったことは、紛れもない事実である。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
世論は意図的に製造される
『月刊日本』2021年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年12月22日
11月28日の朝日新聞のオピニオン欄に、「真山仁の視線」の連載第18回が出ている。開戦記念日12月8日が近いからか、タイトルは「戦争とメディア」とあるので、どんなことが述べられているのか、興味を惹かれて読んでみた。
大東亜戦争開戦の原因としては、外には日中戦争における欧米の対日批判、特に経済統制があり、内には軍部の暴走があったと指摘する。ただし「いずれも開戦の一因だったのは間違いない。だが、開戦理由の中で、見落とされがちな存在がある。それは、日本国民自身が開戦に加担していた事実だ」と断定する。
そして戦前でも日本は民主主義国家であったのであり、「首相が、日本という国家の全ての決定権を握る責任者であった。したがって、軍人だけで勝手に戦争ができたわけではない。中でも国民意向を無視して開戦などありえなかった」と、さらに国民の意向と責任が強調される。
ではタイトルにあるメディアの問題はどうなったのか、それは大東亜戦争をさかのぼる、満州事変の勃発に関して説明される。満州事変は、「実は中国東北軍への攻撃の大義名分を作るために関東軍が仕掛けた爆破だったが、それを報道した日本の新聞社は、当時、一社もなかった。逆に、事変に肯定的な報道合戦が始まる。その結果、部数減が続いていた新聞の発行部数は回復し、やがて急増する」と説明される。ここでやっとメディアとしての新聞の責任に言及する。
しかし以上の前半の部分に続く後半の部分では、急に次のように言い出して、明らかに話の筋がねじ曲げられる。「新聞以上に、国民の戦意発揚を刺激したメディアがある。25年にスタートしたラジオ放送だ」と、同じメディアでも放送の方に矛先を転換してしまうのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
三島由紀夫が憎んだ戦後日本の偽善
『月刊日本』2020年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年11月22日
三島由紀夫が自決してから50年になる。彼の発言としてよく知られているのは、昭和45年7月7日のサンケイ新聞夕刊に掲載された、「果たし得ていない約束―私の中の二十五年」の末尾の部分である。
それは「私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう。それでもいいと思っている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなっているのである」とあった。
ただし今の日本は経済大国ですらない。アメリカによって、日本経済はたたきつぶされ 、何万もの自殺者を生み出し、この二十数年にわたって経済成長していない。
しかし私が三島の発言とし重要だと考えるには、同じ文章の冒頭の部分であり、それは以下のように発言されている。
「私の中の二十五年間を考えると、その空虚さに今さらびっくりする。私はほとんど『生きた』とはいえない。鼻をつまみながら通りすぎたのだ。二十五年前に私が憎んだものは、多少形を変えはしたが、今もあいかわらずしぶとく生き永らえている。生き永らえているどころか、おどろくべき繁殖力で日本中に完全に浸透してしまった。それは戦後民主主義とそこから生ずる偽善というバチルスである。
こんな偽善と詐術は、アメリカの占領と共に終わるだろう、と考えていた私はずいぶん甘かった。おどろくべきことには、日本人は自ら進んで、それを自分の体質とすることを選んだのである。政治も、経済も、社会も、文化すら」。
すなわちここで三島が強調しているのは、戦後日本を徹底的にダメにしたのは、「偽善」であることである。この「偽善」こそ、三島の怒りを理解するための、キーワードである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
安倍政権の「負の遺産」
『月刊日本』2020年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年10月22日
安倍首相が病気の悪化を理由として、八月末に急遽辞任した。その後の後継争いでは、菅官房長官が首相の座を射止めた。安倍政権の業績に関しては、似非リベラルメディアが、懸命にこき下ろす一方、保守系の雑誌では称賛の嵐と言って良い。そこで本稿では、私なりに安倍政権の「負の遺産」について述べてみたい。
まず、拙速に悪質極まる法律を作ってしまったことがある。それこそがヘイトスピーチ解消法である。最初は野党が提案したものであったが、それを与党の自民・公明によって、とんでもない改悪が行われて、そのまま成立してしまった。この法律は2016年4月8日に参議院に提出され、同院の法務委員会・本会議、衆議院法務委員会と、とんとん拍子に進み、5月24日に衆議院本会議で成立した。しかもその直後6月4日には施行されるという、驚くべきスピード振りであった。
改悪の点とは、被害者の対象をすべての人間とせず、「本邦外身者」としたことである。これこそ憲法の自由と平等に違反しているのであるから、野党やとりわけ似非リベラルメディアが大反対しなければならないのに、問題にされること無く成立した。このこと自体、日本の民主主義が、いかにいい加減なものであるかをよく表している。
この法律はいわゆる理念法であって、罰則を伴わなかったが、その後各自治体で条例化する動きが出てきて、特に川崎市では最高50万円の罰金を課す条例を19年に制定し、翌年7月に発効してしまった。
またこの法律の成立以後、事あるごとに政治家などの発言を、執拗に問題視する風潮を生み出した。最近では、コロナ騒ぎに関連して、盛んに誹謗中傷が叫ばれているのは、その端的な影響であると言える。
以上は、とんでもない悪法を作ってしまった例であるが、その反対に重大問題をいたずらに放置してきた例がある。それは外国人による、日本の土地の買収問題である。この問題はかなり以前から問題視していた人々がいた。平野秀樹・安田喜憲共著の『奪われる日本の森』(2012年9月、新潮社)によると、文明史学者・安田氏が最初に警告を発したのが、2008年夏であるという。北京オリンピック当時で、十二年も前のことである。宮本雅史氏は産経新聞によって、連続的に記事を書いており、著書も出していた。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
中国が猛反発する チェコ・台湾関係
『月刊日本』2020年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年9月23日
8月30日から9月4日まで、ビストルチル上院議長を団長とする、90人に及ぶチェコの訪問団が、外交関係のない台湾を訪問した。同議長は大統領に次ぐ、第二位の存在であり、中国の強硬な反対があったにもかかわらず、実行されたものである。ビストルチル議長は、9月1日に台湾の国会に当たる立法院で演説し、3日には蔡英文総統と会談した。
9月2日の産経の記事で、立法院での演説を紹介すると、まず「中国が訪問に反発していることを念頭に『世界各地の議会は、民主主義の原則と自由の精神を守らなければならない』と強調した。その上で『国会で作る法律は人々を守るためのものであり、人々の自由を制限するものであってはならない』と語った」とある。このあたりは、香港の国家安全法を意識したものであろう。
そして「ビストルチル氏はケネディ元米大統領が東西冷戦中の1963年、共産主義体制の脅威の最前線にあった西ベルリンで演説し、『私はベルリン市民』と支持を表明したことに言及。『私も自分の形で台湾への支持を表現したい』として、中国語で『私は台湾人』と訴えた。この言葉に立法委員(国会議員)らは総立ちとなり、議場では大きな拍手が約1分間鳴り響いた」という。
9月3日、議長は蔡総統と会談したが、4日の産経記事のリードによれば、総統は「『チェコは台湾と同じように独裁政権に反抗し、民主主義と自由を求めた歴史がある』と述べ、基本的な価値観を共有していると強調した。さらに、中国の強硬な反発を押し切って訪台した一行の決断を高く評価した」という。
この記事には、ビストルチル議長は台湾の外交部長との共同会見で、「中国の王毅国務委員兼外相が、今回の訪台について『一つの中国原則に違反した』『一線を越えた』などと批判していることについて、『一線を越えたとは思っていない。全ての国は自ら外国との条約を理解し解釈する権利がある』と反論した」とある。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
冷戦は継続していた
『月刊日本』2020年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年8月22日
コロナ以後、アメリカの中国批判は次第に拡大し、領事館の閉鎖にまで発展していたが、7月23日にポンペオ国務長官による、決定的な講演が行われた。この講演で同長官は、アメリカの従来の中国関与政策は完全に失敗したと断言し、習国家主席を破綻した全体主義思想の信奉者であると決めつけた。トランプ政権による明確な中国批判は、ペンス副大統領が、以前に二回ほど行っていたが、決定版が登場したわけである。
このアメリカと中国の対決を、「新冷戦」と形容する向きがあるようである。私が見たNHKBSの中国のニュースでも、画面に「新冷戦」と表示されていた。しかし私はこの「新冷戦」と言う表現は、二重の意味で間違っていると考えるものである。
そもそも本来の戦後の冷戦体制なる言い方も、当時の現実を正確に反映していない。自由主義と共産主義の、相いれない両陣営が対立していたが、実際の戦争状態にならなかったから、「冷たい戦争」、冷戦と言うわけである。しかしこれはヨーロッパの状況を表現しているに過ぎない。アジアはどうであったのか。アジアには朝鮮戦争とベトナム戦争と言う、二つの大規模戦争が出現した。つまりアジアは冷戦ではなく、「熱い戦争」、「熱戦」状態にあったのである。冷戦体制と言う言い方は、あくまでもヨーロッパ中心の歴史観である。
そして約30年前、ソ連の崩壊によって冷戦体制も崩壊したとされるが、これも大いなる錯覚である。ヨーロッパにおいては、ソ連の衛星国であった東欧諸国が民主化され東西ドイツも統合した。ソ連自体も民主化されて解体し、多くの独立国が誕生した。東欧では民主化された国が、さらに再分割されることにもなった。
しかしアジアでは共産主義国家は民主化されなかった。中国・北朝鮮・ベトナムは共産主義のままである。唯一民主化されたのがモンゴルであり、それはモンゴルがソ連の衛星国であったためである。ただしアジアでもソ連に属していた、中央アジアのイスラム五カ国は、独立し民主化されたが、中国は解体されず、ウイグル人は独立できなかった。つまりアジアでは冷戦体制は、基本的に崩壊しなかった。したがって民主化と民族独立と言う、歴史の進歩を示す二つの課題は、ともに達成できなかったのである。アジアはあるべき変化に、取り残された。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞は中国とWHOの責任を徹底追及せよ
『月刊日本』2020年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年7月22日
朝日新聞に短期の断続的連載で、「コロナの時代」全12回と言う記事がある。その最後の3回は、「パンデミックの序章」と題して、初期の状況を解説しているが、さらにその3回目(7月7日)は、テドロスWHO事務局長に関するもので、いままで擁護していた朝日としては、批判的な説明となっている。
まず冒頭で1月28日のテドロスの訪中に触れ、「中国衛生当局関係者はこの時のテドロス訪中について、『彼は訪中前、中国にとって大きな役割を果たしていた。習氏が出迎えたのは、そのねぎらいの意味もあった』と明かす」と述べる。ねぎらいの理由とは、「新型ウイルスのヒトからヒトへの感染が判明した段階で中国が懸念したのは、WHOが『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』を宣言し、中国との人の往来や貿易の制限を各国に勧告することだった」からで、それをテドロスによって回避できたからである。
その間の経緯を、次のように説明する。1月22日に開かれた緊急委員会で、委員の意見が分かれて、「結論は出ず、テドロスは『もっと情報が必要だ』として、会議の1日延長を決めた。」翌23日、中国は武漢封鎖を行った。「1千万人都市のロックダウンという前例のない措置が、WHOの判断にどう影響したかは分からない。しかし、封鎖から数時間後に再開した会合で、テドロスは『緊急事態宣言は時期尚早』との結論を下した」とある。
テドロスは二日続けて緊急事態宣言を見送ったが、封鎖が「WHOの判断にどう影響したかは分からない」と言うのは、真っ赤なウソである。WHOは武漢封鎖に、完全に目を瞑ったのである。朝日の中国忖度体質がよく表われている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
「悪の大帝国」を育てたアメリカ
『月刊日本』2020年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年6月22日
今回のコロナウィルスによる世界的感染問題、つまりバイオハザードは、前回指摘したように、明らかな中国によるバイオテロなのであるが、現時点で見る限り、これは大成功を収めていると言える。
5月18日にWHOの総会が行われたが、ここで中国は犯罪行為の責任追及を見事に免れた。そもそもこのバイオテロ問題の根源は、中国とWHOとの癒着・野合に存在しており、それは台湾の追放問題であった。しかしこの総会で台湾は招待されず、台湾招致は先送りになった。以前は、台湾もオブザーバー参加をしていた時期もあるが、台湾の政権の交代で再び追放したのである。これこそ健康問題に政治を強引に持ち込んだ、甚だしい人権侵害の横車である。
もう一つ最重要な問題である、中国の初動体制の調査問題も、これこそ現在討議しなければならないのに、これまた先送りされた。この調査問題の先送りは、EUが主導して提出されたもので、EUの親中体質がよく表れている。日本政府もそれに乗ったようだが、習近平訪日にこだわった、安倍政権の親中派の影響によるものであろう。
そして中国を積極的に批判する、トランプ政権のアメリカに、実に大きなダメージを与えることが出来たことが極めて重大である。。トランプ政権は経済問題において関税攻勢によって、中国を追いつめていた。そのアメリカに対して、経済的に弱体化させることが出来たのである。当然アメリカの軍事力も弱体化するから、そのどさくさ紛れに南シナ海・東シナ海への膨張を強めている。中国自身の軍事予算は減らすどころか、かえって増加させている。
またアメリカではもともとトランプ大統領に批判的なメディアが、アメリカにおける感染爆発の責任を、もっぱら大統領の対処のまずさに求めて、国内が一致するどころか、国内の分断をあおっている。いわゆるリベラル・メディアは、バイオハザード問題において、トランプ叩きに励んでいるのである。このあたりの状況は日本も同じで、安倍政権の施策に、主流メディアは片っ端からイチャモンを付けて回っている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
新型コロナは中国・WHOのバイオテロだ
『月刊日本』2020年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年5月22日
コロナウイルス問題に関して、最近では感染の発生源が話題になっている。それが武漢の細菌研究所であるらしいことは、日本の保守系雑誌では、とっくに言及されていたが、ようやくアメリカが言い出したことで、朝日新聞も取り上げている。
朝日によると、「武漢ウイルス」と呼ぶのは、偏見・差別に当たるようだが、私は「武漢ウイルス」と呼ぶのは、まだまだ生温くて、正確には「習近平ウイルス」あるいは「近平ウイルス」と、明確に表現すべきであると考える。
欧米諸国の首脳は、今回のコロナウイルス問題を戦争と表現して、敵はコロナウイルスだと言っているが、それは正確ではない。戦争と言うより、残酷極まりない世界的に巨大なテロ、バイオテロであり、それを起こした犯罪人が明確に存在するのである。個人としての主犯は中国の習近平国家主席であり、従犯は国連の世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長である。組織としてのレベルで言えば、主犯が中華人民共和国で、従犯がWHOである。今回のコロナウイルス問題が戦争だというのであれば、この個人と組織こそが、戦争犯罪者、つまり戦犯である。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日は中国のメッセンジャー・ボーイ
『月刊日本』2020年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年4月22日
今回のコロナウイルス問題の勃発で、日本でも世界でも実にいろいろ問題の所在が明らかになった。その中でも極めて重大な問題として、EUの内部の分断・亀裂という問題がある。従来でも中東からの不法移民問題や、イギリスの離脱問題で指摘されていたが、コロナウイルス問題でいっそう鮮明になった。
3月16日、ドイツはコロナ対策のために、周辺の五カ国との国境を封鎖した。五カ国とは、フランス・オーストリア・スイス・デンマーク・ルクセンブルクである。ドイツ以前に国境封鎖した加盟国は幾つもあるが、中心国家ドイツが看板政策であるシェンゲン協定に自ら違反したのは象徴的であった。
EUの亀裂は、コロナ債の問題にも表れている。コロナ債とは、コロナウイルス問題に対処するために、緊急に債権を発行しようとするもので、被害の大きいイタリア・スペインなど九カ国が、EUに要求したがドイツなどによって反対された。
ところでコロナウイルス問題での対立は、ハンガリー政権の対応に関しても表面化している。それはハンガリーのオルバン政権が、非常事態法を成立させたことである。3月30日に採決され、翌日には施行された。4月2日、朝日朝刊の報道によると、「同法は、感染対策に必要なら根拠法がなくても特別措置を講じられる権限を政府に与え、国民が隔離政策に従わない場合、禁固3年以下の刑を科したり、フェイク(偽)ニュースなど感染対策を妨げる情報を流した場合は禁固5年以下の刑を科したりする」もので、野党が反発しているのは、期限があいまいな点だという。
EUのフォンデアライエン委員長は、名指しではないが、31日の声明で、「自由、民主主義、法の支配、人権の尊重」と言った、基本的理念に対する危惧を表明し、国連人権高等弁務官事務所も、同法に期限が設けられていなことに警告を発した。
ところでこのハンガリーの非常事態法については、朝日新聞の「素粒子」が4月3日に、早速イチャモンを付けている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
習近平を忖度した安倍政権
『月刊日本』2020年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年3月22日
新型肝炎、新型コロナウイルス問題で、日本のみならず世界中で大騒ぎになっている。この問題は最初の段階の無関心・油断と、今度はその反動としての、過度の恐怖心から成り立っていると考えられる。
中国では昨年12月初旬に、コロナウイルスは確認されていた。それが正式に公表されたのが、今年の1月9日のことである。人から人への感染が確認され、武漢を中心にそれが見る間に増大するとともに、死者が続出するようになる。中共政権も対応しきれなくなって、一千万都市・武漢の封鎖に踏み切ったのが、1月23日のことである。
コロナウイルスに対する警戒心は、日本でかなり欠落していた。日本ではすでに最初の感染者が1月15日に発見されており、それは神奈川県在住の30代の男性で、武漢からの帰国者であった。その後に武漢の閉鎖が行われたにもかかわらず、日本の対応は緩慢で、諸外国が中国からの入国禁止・制限を、1月の末に行っていたが、安倍政権は湖北省に限定するだけだった。
しかも1月28日に、奈良の観光バスの運転手の感染が公表され、これが国内での二次感染が分かった最初である。このバスは武漢からの観光客を乗せていた。2月の中旬になると、東京のタクシー運転手の感染が分かった。この運転手は、個人タクシー組合の新年会が、屋形船で行われたものに出席していた。このルートからは、続々と感染者が表れて、特に運転手の義理の母親が、2月13日に死亡した。これが日本人の最初の犠牲者である。
この二つの事例は、ともにすでに1月の中旬に感染が行われていたものであるが、国内での感染については、基本的に深刻な問題として受け取られなかった。それは武漢からの帰国チャーター便の問題とクルーズ船の感染問題に、コロナウイルス問題としての注意が集中してしまったからである。しかし日本での新型肺炎の流行は、根本的に中国観光客の訪日によってもたらされたものなのであるから、市中感染は着々と進行していたはずである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日韓関係を破壊する「朝日イデオロギー」
『月刊日本』2020年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年2月22日
1月26日の朝日新聞朝刊の、天声人語と社説余滴はそれぞれ、奇しくも、と言うより意図的・計画的なのであろうが、日韓関係の現状を憂慮して活動する、二人の日本女性を取り上げている。
天声人語の方は、戦争中に立教大学に留学したが、治安維持法で捕まり獄中で亡くなった、尹東柱と言う朝鮮人詩人の作品を朗読する会を続けている、「詩人尹東柱を記念する立教の会」の楊原泰子さん(74)である。毎年2月16日の命日のころに、大学で朗読会を開いてきた。
社会社説担当の中野晃記者による、「柳宗悦の思いを継ぐ」と題する文は、朝鮮の運命に同情した柳に言及し、その思いを継承する人物として、京都市の大学院生である野々村ゆかりさん(57)を紹介する。
ゆかりさんは、日本統治下の朝鮮半島北部で生まれ育った実母(83)から、当時の様子について聞き取り調査を続けている。「祖父や母が体験したことに迫りたいと、野々村さんは、朝鮮からの引き揚げ者も加わる『京都戦争体験を語り継ぐ会』に参加。この夏も戦争や植民地の実相を若い世代に伝えるイベントを開く準備を進めている」という。
ゆかりさんの曽祖父と祖父は朝鮮総督府所属官署で要職を務めた人間で、実母は日本人のみの鉄道局官舎で暮らしたというから、官署と言うのは鉄道なのだろう。そして「幹部の娘だった母は戦争中も白米やカステラを口にしていた。(中略)裕福な生活は45年の敗戦で一変」とあるので、内地よりよほど安楽な生活だったわけである。「日本の侵略に関わっていたと思うと複雑な気持ち」と言う母親の言葉は、文字通り取って付けたようで白々しい。
この天声人語と社説余滴の二つの文章の価値は、書いた人間の精神の貧しさ、本質的な愚かさが、見事に表れていることである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
中国を忖度するローマ教皇
『月刊日本』2020年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年1月22日
前回の本稿で、カトリック教会の性的虐待問題を報告したが、紹介できなかったこともあるので言及しておきたい。それは教皇の帰国直後の11月27日の朝日新聞紙面に出ていた、教皇の出身地アルゼンチンの事例で、イタリア人とアルゼンチン人の司祭が、長期の禁固刑の判決をうけたものだが、もっと詳しい内容が、11月26日の朝日のデジタル版に載っている。紙面で省略されていることはいくつかあるが、最も重要なのは、次の部分である。
「この事件では、コラディ容疑者らの犯行を助けたとして、日本人の修道女コサカ・クミコ容疑者が17年に逮捕された」。つまりこの事件は教皇に関係するだけでなく、日本のカトリック教会とも関係がある。日本人修道女も関与しているのだから、日本人に知らせるべき情報であるが、朝日はこれを紙面では報じなかった。前稿の最後で指摘したように、朝日新聞の日本カトリック教会に対する明白な忖度である。
さらにローマ教皇の訪日に関することで、極めて重要であるのに、ほとんど注目されなかったことがある。教皇は来日してから長崎・広島を訪問するなど、核兵器廃絶には極めて熱心に発言した。最後の方では核兵器のみならず、原子力発電など核エネルギーの平和利用まで、否定するほどになっていった。
教皇は核兵器廃絶と言う、現実離れした問題に対して、異常に熱心であったが、アジアに来たにもかかわらず、アジアで現実に起きている重大問題に関しては、全く無関心であった。教皇来日当時における、アジアの重大問題と言えば、香港のデモと中国のウイグル問題であった。しかし教皇はこの二つの問題に、発言しようとはしなかった。つまり教皇による中国に対する、甚だしい忖度に他ならない。
それどころか11月28日の共同電に基づく産経の記事によると、「訪問先の日本からローマに戻る特別機内での記者会見で、香港情勢について質問されたが個別の言及は避けた。世界各地に問題を抱える場所があるとして、対話と平和を求めると述べるにとどめた。いつ中国に行くのかとも問われ。『北京に行きたい。中国が大好きだ』と発言した」と言う。雑誌ウイル2月号のコラムで、湯浅博氏が言及しているが、「フランス紙『フィガロ』は、これを『偽善』との見出しを掲げ、『中国の機嫌を損ねないようにしている』と辛辣に批判した」ということである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日本でも発覚 カトリック教会の性的虐待
『月刊日本』2020年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年12月22日
ローマ教皇が、11月23日から同26日の日程で来日した。 この来日については、朝日新聞は大量の報道を行って、宣伝にこれ務めた。ただし一連の記事の中で、異質の記事が一つあった。11月20日3面で、見出しは「バチカン改革 苦心の法王」となっている。冒頭に「ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が19日、日本とタイの訪問に向けて出発する。聖職者による性的虐待などの不祥事で、欧米では人々の教会離れが深刻化。法王は、信者が増えるアジアで、自ら進めるバチカン改革への支持を広めたい考えだ」とある。カトリック教会の、負の側面を指摘したもので、「『教会離れ』が進んだ最大の原因は、00年代に発覚した神父らによる児童や神学生への性的虐待と組織的隠蔽だ」、「法王は今年2月、性的虐待問題の特別会議で『教会の恥』と指摘。だが、会議が打ち出した再発防止策は『事案を隠さず司教に報告する』などにとどまり、被害者団体などから批判が噴出した」と説明されている。
以上は、イタリアの河原田特派員によるものだが、この記事にはさらに日本での性的虐待が、無署名で報告されている。全文を紹介する。
「日本のカトリック中央協議会などによると、国内各地域の聖職者トップでつくる司教団を中心に、02年と12年に性的虐待についての全国調査を行い、計7件の被害申し出を受けた。調査に当たった司教らは『十分に責任を果たしてこなかったことを反省』するという声明を出した。
司教団は今年6~10月にも改めて調査を行い、現在も追加調査中だ。協議会は、被害者の申し出に対応する部門を設けるなど相談態勢の充実や被害防止に努めている、としている。日本カトリック司教協議会の会長、高見三明・長崎大司教は『神学校で教育を徹底しないといけない』と話す」。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
表現の自由は無制限ではない
『月刊日本』2019年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年11月22日
8月初めに開催された「あいちトリエンナーレ」の中で、猛抗議によって三日で中止となっていた企画展「表現の不自由・その後」が、10月8日の午後から強引に再開された。その再開の理由を、実際に見て判断して欲しいといいながら、展示方法は極めて制限されたものであり、言動が完全に矛盾していた。
この展示の最大の特徴は、開催者が「表現の自由」を金科玉条として、それをやみくもに言いつのったことである。なるほど日本国憲法の第21条には、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とある。しかし同じく第12条には、「この憲法が国民に保証する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と、明確に言っている。表現の自由が、無制限なものではないのは、あまりにもあきらかだ。
今回の企画展の真の目的は、本誌10月号でも述べておいたように、昭和天皇を戦争に絡めて貶めることであった。しかし当初反発が強かったために、問題点を慰安婦像の方に集中させて、昭和天皇の方はなるべく隠蔽する作戦に出た。したがって、昭和天皇の肖像に放火して燃え上がらせ、さらにその灰を踏みにじる映像に、「昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品」という、意図的な表現が一貫して使用された。この展示を問題視した例外的な首長の一人である、黒岩神奈川県知事も、慰安婦像だけに注目して、この隠蔽工作にすっかり騙されていた。
ところが10月14日の閉会直前の12日になって、朝日新聞はこの映像作品の張本人である、大浦信行へ長文のインタビュー記事を掲載して、真相を明らかにする。しかしその内容は、まことに支離滅裂なもので、「僕にとって燃やすことは、傷つけることではなく昇華させることでした」などと、昭和天皇を呪詛する本音を、懸命にごまかそうとしていた。憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とあるのだから、天皇を貶めることは、日本国、日本国民を貶めることであって、最大級の国家犯罪に他ならない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
旭日旗問題の再燃
『月刊日本』2019年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年10月22日
韓国との旭日旗問題が再燃している。昨年は観艦式でのことであったが、今回はオリンピック・パラリンピックでの問題である。
この旭日旗問題については、昨年の観艦式問題の時点で、私はその起源を含めて、本誌の昨年11月号で「旭日旗問題の過去と現在」のタイトルの下に、かなり丁寧に解説しておいた。その起源は韓国ではなく中共にあり、2001年に女優でモデルの趙微が旭日模様の衣装を着ていることが問題になり、長沙のイベントで暴漢に襲われ、謝罪に追い込まれたという事件があった。ただしその後20年近く経つのに、中共で問題になっているという話は、全く聞こえてこない。
韓国の方は、2011年のサッカー試合から問題になり、その後、徐敬徳という学者が中心となって、旭日旗排斥運動が展開され、それは海外にまで及ぶだけでなく、放射状のデザインなら、何でもかんでも攻撃・排斥すると言う、精神病理的現象が出現している。日本のエセ・リベラルな媚韓メディアは、韓国に忖度してまともに報道しないが、インターネット情報には、以前から、たくさん取り上げられている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
メディアこそ真の戦争犯罪者
『月刊日本』2019年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年9月22日
8月初めから、「あいちトリエンナーレ2019」が開催され、その展示の一部に多大の批判が寄せられて、急遽中止となった。それは企画展「表現の不自由展・その後」で、以前各地の展覧会で問題を起こした展示の数々を、わざわざ集めて再展示したものであった。
多くの展示のなかでも特に批判が集中したのが、慰安婦少女像と昭和天皇の写真を焼却する映像に関してあった。この二つの組み合わせと言えば、直ちに思い出すのが、今から約20年前の年末に、東京で開催された、いわゆる「女性国際戦犯法廷」と称せられる、謀略裁判劇である。この裁判劇の正式名称は、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」だが、ふつう正式名称で呼ばないのは、その凶悪性を隠すためである。
ほとんど理解されていないが、この裁判劇の目的は、表看板とは全く異なって、慰安婦を救済するためではない。真の目的は、昭和天皇に戦争犯罪人として、有罪判決を下すことであった。東京裁判において、昭和天皇は裁かれなかった。それが悔しくて仕方がない人間が、東京裁判では取り上げられなかった慰安婦問題を利用したわけである。したがって裁判劇を企てた人間の考え方は、「東京裁判不充分史観」あるいは、「東京裁判でも未だ足りない史観」と呼ぶことができる。
この裁判劇を企んだのが、朝日新聞出身の松井やよりであり、朝日新聞はこの裁判劇を大報道した。月刊雑誌で最も詳しく報道したのが、岩波の世界であり、週刊誌では朝日ジャーナルの後継誌である週刊金曜日であった。そしてテレビではNHKのEテレが裁判劇を取り上げたが、昭和天皇への有罪判決の部分については、放送できなかった。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
吉本問題の根本原因
『月刊日本』2019年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年8月22日
最近、吉本興業とジャニーズ事務所という、二つの巨大芸能プロダクションについて、色々と問題が指摘されている。ジャニーズはともかく、吉本についてはまだまだ尾を引いているようだ。この芸能プロダクション問題は、結局、根本的にメディアの腐敗堕落から発しており、メディアは自己の暗部を隠蔽している。今の日本では、経済二流、政治三流という表現があるが、メディアはさらに下の五流以下と言える。
メディアと言っても芸能プロダクションと直接関係があるのは、放送メディアであるが、近年における放送メディアの堕落ぶりは、余りにも異常である。これは平成時代になって、一層顕著になった。昭和時代はこんなことはなかった。
放送の重大な使命は、聴取者に対して正確なニュースを提供することであるが、ニュース番組が異常に劣化している。ストレートニュースがほとんどなくなり、極めて感情的にナレーターがしゃべり、かつそれに煽情的な背景音楽をかぶせる、ドラマ仕立てとなった。しかもその報道の基調が、虐日偽善的な偏向であり、メディア自身が、フェイクニュースの一大殿堂になっている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
天皇とエセ・リベラリスト
『月刊日本』2019年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年7月22日
平成の時代が終わり、平成を総括する類の本が、続々と出版されている。とても読み切れたものではないが、その中で原武史の『平成の終焉』(岩波新書)を読んでみた。確か朝日新聞の書評欄で、呉座勇一が歯切れの悪い評を書いていた、記憶があったからである。
読んでみて、特に注目したのは次の部分である。「本来、天皇を規定するはずの法が、退位したいという天皇の『お気持ち』の表明をきっかけとして新たに作られたり改正されたりすると、論理的には法の上に天皇が立つことになってしまいます。天皇が、個人の都合で専制的な権力をもつことになるわけです。大日本帝国憲法によって天皇大権を与えられていた明治、大正、昭和の各天皇のときも、こんなことはありませんでした。」(52頁、傍線引用者)
平成天皇の慰霊行為は、憲法を逸脱しているとする、渡辺治のような人は以前かいるようだが、天皇の退位行為は大日本帝国憲法にすら違反すると、言っているわけである。ほかに、誰が同じ意見を述べているのか、寡聞にして知らないが、極めて注目すべき意見と言えるだろう。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
パックス・シニカ
『月刊日本』2019年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年6月22日
5月15日の朝日新聞朝刊、オピニオン面にインタビュー「米国超え 中国の夢」という記事がある。インタビューの相手は中国国防大学教授・劉明福(上級大佐)なる人物で、生粋の軍人で軍部でもタカ派で鳴らしているという。聞き手は峯村健司記者で、以前から中共軍部と強力なコネクションがあり、航空母艦の建造開始など、重要な軍事情報をスクープして、ボーン上田賞を受賞しているスター記者である。
陸は胡錦涛政権下の2010年、「中国の夢」を出版してベストセラーだったが発禁処分になった。それが習近平政権になった2012年末に再刊されて、習の唱える「中華民族の復興」という、現代に生きるウルトラ・ナショナリズムである、シナ侵略主義のイデオロギーの原典になったのだという。
「中国の夢」はどんな戦略なのかというと、「私が考える戦略は、三つあります。一つ目が『興国の夢』。中華人民共和国建国100周年の2049年までに経済や科学技術などの総合国力で米国を超え、中華民族の偉大な復興を成し遂げる。二つ目が『強軍の夢』で、世界最強の米軍を上回る一流の軍隊をつくること。そして最後が『統一の夢』で、国家統一の完成です」と答えている。国家統一とは台湾併合のことだという。
2049年まで今後30年の予測は、最初の10年はアメリカが日本を使って圧力をかけてくる時代、次の10年は睨み合いが続く時代、最後の10年はアメリカが衰退して中共が主導権を握る時代であるとする。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
皇室の〝三重権威〟問題
『月刊日本』2019年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年5月22日
平成天皇(現上皇)の退位の意向が報道されてから、約3年弱の5月1日、天皇の代替わりが実現した。生前の譲位は江戸時代以前には、普通に行われたことであり、決して不自然ではないと、上皇はおっしゃった。だからと言って、皇室のあり方が、江戸時代以前に戻ったかと言えば、それは明らかに相違している。
今回、全く議論されなかったが、明治に始まった一世一元の制度が変質したことは重要である。江戸時代までは、大化以来年号と天皇在位期間とは、基本的一致していなかった。明治に明・清の制度に倣って、一世一元制を取り入れ、これはそれなりに安定した制度であった。しかしそれは奇妙に崩れたから、時代の区切りが、完全にぼやけるだろう。
具体的には、二重権威の問題がある。天皇と上皇が存在することによって。権威が分裂するという問題である。それは江戸時代でも同じだと考えるのは全くの誤りである。江戸時代の皇室のあり方は、現在と全く異なっていた。そのことがほとんど理解されていない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
緒方竹虎と三浦梧楼
『月刊日本』2019年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年4月22日
5月1日の天皇の代替わりに伴って、一ケ月繰り上げた形で、4月1日に新しい元号が発表された。それは「令和」だったが、選考過程などの推測も交えて、新聞各紙では大量の報道がなされた。4月6日の朝日「メディアタイムス」欄によると、2日朝刊では地方版以外で、読売15、毎日12、朝日11、産経10、日経9のページ数だったという。発表直後には号外が出されたが、その部数は読売約103万、朝日約20万、産経約9千、毎日非公表で、日経はださなかった。人々はそれを文字通り奪い合って手に入れていた。インターネットの時代になっても、号外にはそれなりに人を引き付けるものがあるようである。したがって昔においては、さらに号外は魅力的であり、新聞各社はスクープによる号外合戦にしのぎを削ったわけである。
ところで秘密保持に、多大な苦心が払われたとされる今回、スクープは起こらなかったが、メディアの取材合戦は、どのようなものであったのだろうか。私が簡単に各紙に目を通した印象で言えば、毎日新聞がかなり気合をいれていたように感じられた。そうだとすれば毎日新聞には、元号スクープに関して過去の歴史のトラウマがあり、強い思い入れがあったと考えられるのである。
すなわち、まず明治天皇崩御による、「大正」元号においては、新人記者・緒方竹虎のスクープによって、朝日新聞が圧勝した。それを無念と感じていたことであろう毎日は、大正天皇崩御による元号スクープ合戦で、「光文」に決定したとの号外を出す勇み足をして、社長の辞任に至ったという。これを「光文事件」と称するらしい。そのために、真実か不明だが、昭和天皇崩御による新元号の場合には、「平成」とつかんでいたのだが、号外の発行に踏みきれなかったと言われている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
平成の敗戦
『月刊日本』2019年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年3月22日
天皇陛下は昨年の天皇誕生日に続いて、在位三十周年式典のお言葉でも、平成の時代は戦争がなかったと述べられ、また皇太子殿下も誕生日の会見で、同じ表現を使われていたと記憶する。しかし本誌2月号で指摘したように、平成の時代は不況によって、膨大な自殺者の増加を見たのであり、しかもそれは日米経済戦争の戦死者なのである。平成の時代を、戦争のない平和な時代であったと認識するは間違である。
つまり平成の時代とは本当は極めて悲劇的な時代であるのだが、平成の悲劇はそれだけにとどまらない。さらに日本を襲った重大な「戦死」が存在することを見逃してはならない。不況による自殺者は、「生物的」な死であるが、それよりはるかに悲劇的でしかも膨大なのは、目に見えない「精神的な死」である。しかも生物的な自殺者数は、現在は以前の状態を回復しているが、精神の死の方はいっそうひどくなり、回復の見通しは全く立っていない。
では精神の死とは何か。それは例の歴史問題が原因である。それが紛れもない戦死であることは、本稿の後方で説明しよう。
歴史問題の淵源は、日本の敗戦による東京裁判にあるが、現在まで続く国際問題としての歴史問題の勃発は、1982年の第一次教科書事件で1986年の第二次ある。その後1教科書事件・靖国参拝問題と続く。この歴史問題の展開には、基本的なメカニズムがある。それは日本のメディアが騒ぎ出し、中共・韓国が日本政府に抗議し、日本政府が屈服するというメカニズムである。第一次教科書事件の際は、侵略を進出に書き換えたとの報道が、完全なフェイク・ニュースだったにもかわらず、近隣諸国条項を作ってしまった。歴史問題の重大化には、日本人自身が深く関与しているのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
地位協定を改定できない根本原因
『月刊日本』2019年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年2月22日
朝日新聞は朝刊の「教えて!」欄で、1月24日から六回にわたって「日米地位協定」を取り上げている。第一回の、沖縄の銃弾被害と騒音問題からはじまり、第二回が「米軍に特権 成り立ちは?」としてその歴史、第三回が「東京の空 自由に飛べない?」で、横田空域の問題、第四回が「改定求める声に政府は?」で、日本政府が動かないこと、第五回が「ドイツやイタリア どんな協定?」で、改定が行われたドイツ・イタリアの実例、第六回が「米軍、他国で裁判免れる特権 なぜ」で、アメリカが世界中で結んでいる地位協定の目的、といった構成である。
地位協定の問題とは、これは基本的に、明治の条約改正問題と類似しているといえるだろう。江戸時代、安政の不平等条約によって、領事裁判権という治外法権と関税自主権の欠如という問題を抱え込んだ。そのために明治政府は、この改正を重要課題としたが、それは容易に達成できず、日本が帝国主義国家の一員として認められるようになって、ようやく実現した。
日米地位協定は、占領最末期に結ばれた日米行政協定を、60年安保の際に改定したものである。第二回の説明では、「行政協定から地位協定へ。表向きは主権を回復した装いをほどこしながら、内容はほぼ引き継がれ、米軍の自由裁量は大幅に残された」と言っている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日米経済戦争の戦死者
『月刊日本』2019年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年1月22日
天皇陛下が12月20日に行われた最後の記者会見の内容が、お誕生日を前にして公表され、23日の新聞などで報道されている。そこでは天皇陛下が、極めて感情的に語られたのが印象的であった。内容的に注目されたのは、「平成の時代には戦争がなくて安堵した」という部分で、朝日新聞一面トップの見出しにもなっているし、同紙の皇室記者・岩井克己氏は最も強烈だったと評している。それは以下の御述懐である。
「そうした中で平成の時代に入り、戦後50年、60年、70年の節目の年を迎えました。先の大戦で多くの人命が失われ、また、我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました。平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています。」しかし、この「戦争のない時代」というお言葉は、平成時代を正確に表現しているだろうか。私は甚だ疑問に考えるものである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
なぜ朝日はBTSを糾弾しないのか
『月刊日本』2019年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年12月22日
11月8日、テレビ朝日は9日に予定されていた、BTS(防弾少年団)のミュージックステーションへの出演を、急遽中止すると発表した。その理由はメンバーが過去に原爆のキノコ雲をプリントしたTシャツを着ていたためであり、以前からネットなどで問題になっていたが、所属レコード会社と協議して決めたものだという。朝日新聞は。9日夕刊でこの問題を12面の肩で大きく報道しており、Tシャツのカラー写真も載せられている。さらに朝日は10日の夕刊で、Tシャツをデザインした会社の人間が、韓国のメディアに、日本を貶める意図は全くなかったと弁明したと、小さく載せている。
問題はそれで終わらなかった。BTSは、ナチス関連の記章付きの帽子や旗を使用したことが発覚し、11日に在米ユダヤ団体サイモン・ウィーゼンタール・センターが、批難する事態となった。産経の共同電によれば、「同センターのエーブラハム・クーパー副所長は、『原爆被害者をあざけるTシャツの着用は、過去をあざけるこのグループの最新の事例にすぎない』と指摘。『日本の人々とナチスの被害者に謝罪すべきだ』と強調するとともに、BTSの所属会社にも公式な謝罪を求めた」とあり、これは13日に報じられた。
ところが朝日はこのサイモン・ウィーゼンタール・センターの抗議を、他紙と異なって全く報道しなかった。それどころか13日には、BTS問題が韓国では、最近の歴史問題などに関連して、反発的に受け取られていることを、ことさら報じている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞とトランプは似ている
『月刊日本』2018年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年11月22日
11月4日の朝日新聞に編集委員の二人による、共通のテーマを扱ったコラムが掲載されている。一つは総合3面の「日曜に想う」欄で、福島申二による「負の言葉の魔力 世界が注視」というもの。もう一つは文化・文芸欄の、石飛徳樹による「評 マイケル・ムーア監督『華氏119』 とことん過激なプロパガンダ」というものである。共通のテーマというのは、福島のものもムーアの映画に言及しており、さらに結局はトランプ大統領批判となっているからである。つまり目前に迫っていた、アメリカの中間選挙を意識してかかれたものである。
マイケル・ムーアに入る前に、港湾労働者で「波止場の哲人」と呼ばれた、米人エリック・ホッファーの言を、福島は紹介している。福島は「ネガティブな言葉が秘める魔力はあなどれない」として、ホッファーの「わずかな悪意がどれほど観念や意見の浸透力を高めるかは注目に値する。われわれの耳は仲間についての冷笑や悪評に、不思議なほど波長があうようだ」と、「ある人々から憎悪を取り除いてみたまえ。彼らは信念なき人間になるだろう」の二つの文言を引用する。
そして福島は、「古今東西、そうした魔力を熟知し、負のレトリックを操って民衆の情念を大動員した魔術師は少なくない。歴史に照らせば、聴衆に、自分たちは何かの『犠牲者』であるという意識を吹き込むのが煽動の常套らしい(トランプ氏のスタイルもそうだ)。それらは希望を呼ぶ甘言とセットで語られ、ヒトラーのドイツをはじめ幾多の悲劇を生んだのは、過去が教えるとおりである」と述べる。結局、トランプとヒトラーを結びつけるわけである。何か小難しい言い方をしているが、福島自身が「幾多の悲劇」というように、極めて普遍的に存在する現象に過ぎない。共産主義者の論法はその典型であるし、「負の言葉の魔力」は、朝日自身がさんざん使っている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
旭日旗問題の過去と現在
『月刊日本』2018年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年10月22日
9月28日の朝日新聞の記事によると、韓国海軍の報道官は27日、済州島で10月10~14日に開く『国際観艦式』で、自国の国旗と太極旗だけを掲揚するのが原則だと、日本など参加国に、8月31日付で通知したと発表した。これは、日本の自衛艦旗である、旭日旗を締め出すのが目的であるのは、あまりにも明らかであった。
この要求に対して、28日に行われた記者会見で、当時の小野寺防衛相は、「自衛艦旗の掲揚は自衛隊法などの国内法令で義務づけられている。国連海洋法条約上も、国の軍隊に所属する船舶の国籍を示す『外部標識』に該当する」(29日、産経新聞)と、拒否する方針をしめした。
韓国はではその後、10月1日に首相が国会の答弁で、日本を牽制する発言があり、また旭日旗を禁止する法案を提出する動きもあった。日本は参加を要求し続けたが、結局10月5日に至って、岩屋新国防相が、観艦式への自衛艦の参加を取りやめることを発表した。
ところで、この旭日旗問題に関連して、正式な旭日旗ならぬ旭日模様・旭日デザインが、かなり以前に中華人民共和国(中共)で問題視されて、騒ぎになったことは、全く忘れ去られてしまっている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞の「敗北宣言」
『月刊日本』2018年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年9月22日
朝日新聞はこのところ、平成時代を回顧する記事を、「平成とは」のアイコンのもとに掲載しているが、9月3日から6日まで、第三部「うつろう空気」として四回連載している。そのテーマは「沖縄」「外国人」「メディア」「世代」で、「沖縄」で基地問題への冷静な見方を紹介しているように、従来の主張を修正する動きがうかがわれる。「メディア」、特に「世代」には、朝日による「敗北宣言」と言うべき論調が観取される。なお各回で担当記者は変わり、簡単な自己紹介が付いている。
「メディア」では前半で産経の雑誌「正論」の編集長を勤めた大島信三へのインタビューをのせ、平成になって保守言論が読者の支持を得てきた状況を紹介する。朝日としては極めて異例であろう。
後半はテレビの問題に移り、「朝まで生テレビ」などが言及されるが、最も注目しているのが「たかじんのそこまで言って委員会」で、これはノンフィクションライター・西岡研介によって、「『ぶっちゃけ』の名の下に、『敵』に対する差別的で排外的な気分をあおってきた番組だ」と徹底的に批判されるが、製作者側の見解は全く出さない。
またメディアコンサルタントの境治は、「在京キー局の情報番組などを調べたところ、森友学園問題や日大アメフット部のタックル問題など一つの話題を集中的に伝える傾向が、ここ数年で強まっているのを確認した」「『悪役』が誰かわかりやすい話題が好まれる。常にたたける相手を探し、徹底的に打ちのめす傾向が社会的に強まっているのではないか」と言っているが、この現象こそ、別に最近のことではなく、朝日新聞が以前からとってきた報道姿勢に他ならない。すなわち朝日による、ジャパンバッシングである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞の虐日偽善主義
『月刊日本』2018年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年8月22日
オウム事件の死刑囚13人のうち、7月6日に7人の、同26日に6人の死刑が執行された。朝日新聞には、7日と27日の朝刊に、降幡賢一・元朝日新聞編集委員が、「暴走の闇 私たちにとって無縁か」と「すさんだ時代の象徴として」と題する、二つのコラムを書いている。
元編集委員の立場の人間が執筆しているのは、オウム事件で、最も活躍した記者であったからだろう。同氏には、「オウム法廷」と題する、何冊もの著作が存在する。ただし私が降幡氏の名前で思い出すのは、例のサンゴ事件の方である。
忘れてしまった人も多いかも知れないが、正月に天皇の代替わりがあった1989年(平成元年)の4月20日の朝日夕刊一面に、サンゴが傷つけられている、大きなカラー写真と共に、沖縄のサンゴ損傷行為で、日本人を厳しく告発・弾劾する記事が掲載された。タイトルは「サンゴ汚したK・Yってだれだ」とあった。写真に添えられた文章の執筆者こそ降幡記者であった。
文章はまず、「これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、長径八メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この『K・Y』のイニシアルを見つけたとき、しばし言葉を失った」と言う冒頭からはじまり、「日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ててきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の・・・。にしても、一体『K・Y』ってだれだ。」と、感情的・攻撃的な表現で結んでいる。
この記事には、まず地元のダイバーから疑問がもたれ、調査の結果、朝日新聞の写真部員が、意図的に傷つけたことが判明した。つまり完全な捏造写真であったのである。そのためこの写真部員は辞めさせられ、当時の社長は辞任に追い込まれた。ただしサンゴ事件が有する根本的な問題は、写真が完全な捏造であったために、単なる捏造事件と理解され、この事件の本質的な悪質性、犯罪性が、かえって分からなくなってしまっていることである。 では何が根本的な問題なのか。それは写真だけでなく、記事の文章そのものにある。そのことが30年たった現在に至るも、全く見逃されているのである。この写真が捏造でなく本物であったとしても、記事の文章には日本人にたいするとんでもない誹謗・中傷が、とくとくと述べられているのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
スポーツの時だけ「ニッポン」を絶叫する人たち
『月刊日本』2018年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年7月22日
ロシアでワールドカップ・サッカー大会が開催され、日本も参加したために、連日にわたって大量の報道が繰り広げられた。結局、戦前の予想を裏切って、予選リーグを通過したものの、トーナメント第一回戦で敗退する結果となった。この間、西野監督の采配については、評価したり批判したり、手のひら返しが繰り返されて、まことににぎやかのことであった。この報道の在り方は、あまりにも騒ぎすぎであると、言わざるを得ない。
ワールドカップ・サッカーは、ナショナリズムを発揚する舞台になっていることは、現実問題として存在しているだろう。その意味で今度の大会において、極めて興味深い出来事があった。6月22日に行われた、スイス対セルビア戦で、スイスのシャキリとシャカの両選手が、ゴールを決めた際に、両手を胸の前で交差するポーズをとった。この両選手はスイス国籍ではあるが、旧ユーゴスラビアのコソボの出身で、アルバニア系であるという。両手の交差は、アルバニア国旗にある双頭の鷲をイメージしており、これはアルバニア・ナショナリズムの発揚であるわけで、とくに相手がセルビアであったことがポイントである。本人たちは説明しなかったようだが、結局、25日になって国際サッカー連盟の規律委員会は、両選手に1万スイスフラン、さらにもう一人に5千スイスフランの罰金を言い渡した。また事前に緊張を高める言動のあったセルビア側にも、それなりの罰金が科されたという。故国を離れても、民族意識を強固に持ち続ける人々が、この世界には存在するのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
マスコミ村のセクハラを追及せよ
『月刊日本』2018年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年6月22日
5月21日、谷口真由美・大阪国際大准教授が代表の、「メディアにおけるセクハラを考える会」が、日本外国特派員協会で記者会見して、メディア関係者35人から調査した150のセクハラ事例を発表した。翌22日の朝刊で新聞各紙が取り上げているが、その日の同じ紙面には、結局辞任に追い込まれた、狛江市長のセクハラ問題が、写真入りで大きく取り上げられているのに、考える会の記事はずっと小さい。問題の重大性から言えば、東京都の一小規模市の首長の問題より、メディア全体に及ぶセクハラ疑惑であるのだから、はるかに大きいはずである。そうしないのは、メディア自身に直接的にかかわる問題だからである。
ところで各紙の記述は同一ではないが、朝日新聞の特異性がひときわ目に付いた。それは加害者の職業・身分についての部分で、毎日は「セクハラを受けた相手は社内の上司や先輩が40%と最多。出演タレントや他社の記者など社外関係者も29%に上った。警察・検察関係者からの被害は12%、国会議員ら政治関係者が11%、公務員が8%だった」とある。この数字は項目に異同があるが、読売・東京も紹介している。
では丸山ひかり記者による朝日の記事は、これをどう説明しているかというと、「加害者の内訳は、警察・検察関係者や議員などの取材対象者のほか、上司や先輩らも少なくなかった。セクハラを職場で相談しても、適切に対応されなかったケースがほとんどだったという」とあるだけで、具体的な%を示さず、社内が最多である事実を隠蔽しているし、その次はメディア関係者であることも、言及していない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
女性専用車という偽善
『月刊日本』2018年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年5月22日
5月6日の朝日新聞朝刊の「憲法を考える」の連載で、「揺れる価値」シリーズの第四回目、見出しが「女性専用車に『逆差別』主張」との記事がある。これがとても面白い。
リードは「偏見やハンディを克服しようと特別な対応をすると、『逆差別だ』と言われてしまうことがある。憲法14条は『法の下の平等』と『差別の禁止』をうたうが、空気のように社会に残る差別が、見えにくくなってはいないだろうか。男女差別を例に考えた。(高重治香)」。
記事の冒頭は、「2月、東京メトロ千代田線の女性専用車に男性たちが乗り、電車が遅れたというニュースがあった。男性たちのグループのブログには、『男性差別』『痴漢でない男性を追い出すのは憲法14条違反』と書かれていた。たった1両の専用車が、憲法を持ち出すほど許せないのはなぜなのか。メンバー2人に会い、3時間話した」とある。
65歳の代表は、就職に苦労したので、年齢制限をなくす運動に取り組んでおり、女性に対するクオーター制にも反対している。もう一人の43歳の男性は、男として冷遇されてばかりだと話したという。高重記者が「女性は差別されてきた歴史があり、地位を引き上げても男性と平等になるだけでは」と聞くと、代表は「社会全体に女性差別があったのは戦前の話。落ち度がない今の男性が差別されるのは、不合理だ」と答えたという。3時間も取材した割には、相手の言い分は少な目だが、代表の主張はリーズナブルである。
高重治香記者のメンタリティーは、次のような記述にもよく表れている、「差別は今も社会に充満する。(中略)救命のため土俵に上がれば下りろと言われる。衆議院議員は約9割が男性で、記者がセクハラを訴えると、大臣が『はめられたというご意見もある』と言い放つ・・・。」最近の話題も盛り込んだ、極めて感情的な表現である。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日本にはびこる「精神的中国人」
『月刊日本』2018年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年4月21日
3月21日の産経新聞に、北京の三塚聖平特派員による、実に興味深い記事が出ている。その見出しに「旧日本軍賞賛『精日』が話題に」「「王外相『中国人のくず』」。記事の冒頭は、「旧日本軍の軍服を着て『日本軍国主義』など日本を称賛するような行動をとる『精日』(精神的日本人)と呼ばれる中国人の存在が、20日に閉幕した全国人民代表大会で話題になった。閣僚が『中国人のくず』と非難したほか、『精日』の処罰を求める意見も出た」とある。
この記事によると、ことの発端は、2月に南京で旧日本軍の軍服を着た人間が写真を撮り、それをインターネット上で公開したことで、「精神的日本人」であると、批判が集中していたらしい。
それがさらに大きな話題になったのは、3月8日の全人代閉幕後の王毅外相の記者会見で、この件について質問を受けた同外相が、怒りをあらわにして「中国人のくず」だと罵ったからである。
この問題については、翌日3月22日の産経新聞でも取り上げられている。それは「石平のチャイナウオッチ」欄で、最初の問題発生の状況および事件の経緯を、比較的詳しく説明しているので、紹介しておく。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
論語読みの論語知らず
『月刊日本』2018年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年3月22日
小川栄太郎氏の朝日批判の著作が気に食わないとして、提訴している朝日新聞だが、ケント・ギルバート氏の本に対しても、よく売れていることに対してイチャモンを付けている。それは3月6日朝刊の、「ケント・ギルバート氏の中韓本 売れる理由は」という記事である。ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』と言う本が、昨年の新書・ノンフィクション部門で47万部とトップだったという。
儒教と言えば思い出すのは、東アジアの経済成長を説明する理屈として、儒教文化圏なる概念が使われたことがあった。またこれと関連して、東アジア共同体の構想もあった。しかし中共の覇権主義の顕在化によって、昨今で儒教文化圏も東アジア共同体も、とんと聞かれなくなった。
儒教に対する親近感は、シナ文化を長く受容してきた日本には基本的に存在し、それは現在でも結構継続していて、児童も含めた論語の根強い流行はその表れてあろう。ギルバート氏の本の特徴は、いままでプラス価値として説明されてきた儒教をマイナス価値として、説明したことにあるのではないか。その意味で、ギルバート氏の主張は日本人にとって、新鮮であったのだろう。
ところで、私はギルバート氏の本を読んでいないので、具体的にどのように説明しているか知らないが、この本のタイトルや朝日の記事から見るかぎり、ギルバート氏の儒教に対する捉え方には、かなり誤解があるのではないかと思われる。タイトルは「儒教に支配される悲劇」であり、記事には「中韓では『儒教精神から道徳心や倫理観が失われ』『自分中心主義が現れて』きたと指摘」とあるが、儒教は本来、道徳心や倫理観についての教えであったはずである。すなわちシナ人や朝鮮人の悲劇は、儒教そのものに原因があるのではなく、逆に儒教の教えを全く理解せず、ましてや実践できないことにあると言うべきなのである。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
新聞の「シナ・ポチ」ぶり
『月刊日本』2018年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年2月22日
1月25日の新聞各紙の朝刊には(毎日のみは、なぜか夕刊)、中共の中国科学院の研究チームが、クローン猿を生み出すことに成功したニュースが掲載されている。それによると24日付のアメリカの科学誌の電子版で発表されたもので、カニクイザルの2匹のメスであり、写真も載っている。
そのやり方は朝日によると、「カニクイザルの胎児の体細胞から遺伝情報が入った核を取り出し、あらかじめ核を抜いた別のメスの未受精卵に移植。成長を促す特殊な処理を施して代理母となる21匹のメスの子宮に移したところ、6匹が妊娠し、そのうち2匹が生まれた」とある。体細胞クローンは、1996年、イギリスで羊の「ドリー」で成功し、その後マウス、牛、豚などで行われてきたが、今回特に注目されるのは、霊長類では初めてだからである。つまり人間にも応用できる可能性があるわけだが、現在は多くの国において法律で禁じられているという。
クローン猿のニュースについての反応は、朝日は翌日の天声人語で、ドリーほどの衝撃はないとしながら、クローン人間の可能性には注目し、とくに「ただ成功したのが中国というのは気になる。独自の尺度で物事を進める国である」と述べているのには、ずいぶん忖度した表現となっている。隷中朝日ですら、危惧を表明せざるを得なかったのだが、中共は「独自の尺度」どころか、わがまま勝手にやりたい放題をしている、完全な悪逆非道国家ではないか。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
朝日新聞・岩波書店の矛盾
『月刊日本』2018年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年1月22日
10月に出版された小川栄太郎氏の著書「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」に対して、朝日新聞はかねてから謝罪と損害賠償を要求していたが、12月5日に至って東京地裁に提訴するに至った。それは著書の内容が事実無根の誹謗中傷であり朝日の名誉が毀損されたとして、同氏と出版社に、謝罪広告と5千万円の賠償を求めるものであった。
言論に対しては言論で対応すべきであるのに、言論の戦いを拒否し、国家権力を利用して、言論を封殺しようとするものであり、言論機関として決して許されない境地に突き進んだわけである。そもそも言論としての戦いであっても、朝日は何百万もの発行部数を誇る、巨大なメディア権力であるのに、他方は弱小な個人と出版社であるから、圧倒的に有利な立場であるのに、朝日が提訴に踏み切ったのは、よほど批判がこたえたからなのか。
核爆弾とミサイルの開発に驀進する北朝鮮に対しては、対話の必要を強調してやまない朝日新聞が、作家と出版社相手では、対話を拒否するありさまは支離滅裂で、滑稽極まりないと言わざるを得ない。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
勅命に屈服した総理大臣
『月刊日本』2018年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年12月22日
12月1日に皇室会議が開催されて、天皇陛下の退位が平成31年4月30日で、翌5月1日が新天皇即位・改元という国家の重大事が、事実上決定した。翌12月2日の各紙朝刊には、大々的に報じられた。
それらの記事を目にして改めて思わされたことは、「退位の意向をにじませた、昨年8月のお言葉」という表現の空々しさである。意向をにじませたどころか、退位を求められたのであり、しかも期限まで限って要求されたわけであるから、これは明らかな勅命に他ならない。
これは疑問の余地のない皇室典範および憲法に対する違反であって、すなわち立憲主義なるものは、真っ向から天皇陛下によって否定されたわけである。ところが立憲主義を名目として、安保法制に大反対していた人々は、それを簡単に容認してしまった。かえって異論を唱えたのは、いわゆる保守の人々であった。つまり安保法制に反対して人々の唱えた立憲主義は、本気でなかったことが、見事に証明されてしまった。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
日本は米国の軍事的植民地だ
『月刊日本』2017年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年11月22日
11月5日、アメリカのトランプ大統領が来日した。その途中、ハワイで「リメンバー・パールハーバー」とツイッターに投稿し、東京には横田基地に到着し演説した。これはいまだに東京裁判史観を継続させ、日本がアメリカの巨大基地が存在する、アメリカの軍事的植民地であるという現実を、再確認する行為・儀式であったのであろう。
日米首脳会談は6日に行われ、その内容は7日の朝刊に詳しく掲載されている。朝日の紙面第2面「時時刻刻」欄の大きな横見出しには、「日米『完全一致』演出」とあるが、この記事のデジタル版の見出しは「トランプ氏、米製武器「売り込み」突出 安倍首相は即応」となっているのが、興味深い。これが朝日の最も注目する点なわけである。
その武器売り込みの部分は、「だが、日本政府関係者の予想を超えて、トランプ氏の言動が記者会見で突出したのは、米国製防衛装備品の『売り込み』だった。」「『非常に重要なのは、首相は(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている』。トランプ氏は米紙記者が尋ねた日本のミサイル防衛の質問に対して、一気に話し始めた。具体的な防衛装備品名まで言及し、日本がこれらを買うことで『我々に多くの仕事を、日本には多くの安全をつくる』と述べた。」とある。これに対して安倍首相は、直ちに同意したという。
同日の天声人語も、この武器購入問題を取り上げ、トランプ大統領は「兵器のセールスマン」であり、その言い方は「あからさま」であり、「北朝鮮への対応とビジネスとの線引きは意外とあいまいかもしれない」と述べている。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
偽善は精神の麻薬である
『月刊日本』2017年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年10月22日
今月号より、「酒井信彦の偽善主義を斬る」との表題で、書かせていただけることになった。私は現在の日本が抱える最大の問題は精神の病であり、それこそが偽善主義の蔓延であると考えるからである。
今回の総選挙において、民進党が希望の党に身売りして、それに対する不満分子が立憲民主党を結成した。この集団をマスコミは、リベラル派と表現しているが、これは全くの誤用である。このリベラルは、保守とリベラルというように、対概念として使われているが、昔は保守と革新と言っていた。彼らリベラル派こそ、実は人権、民主主義、言論の自由など、リベラル的価値を尊重しない、似非リベラルであり、すなわち本質的な偽善主義者である。
一方、保守言論はこの「リベラル」を、共産主義を信奉する左翼が生き残っているかのように理解しているのも、大きな誤りである。もちろん共産主義信者の日本共産党のような人々もいるが、偽善主義におかされている日本人は、さらに限りなく広範に存在する。
これは私がたびたび指摘することだが、鳩山由紀夫という元首相は、母親から何億円もの小遣いを貰っていた人物であり、このような人間が左翼であるはずがない。同人は引退後も、韓国に行って土下座するなど、反日活動に勤しんでいる。
また日本のカトリック教会の最高幹部に当たる、カトリック司教団は日本の歴史問題について、なんども戦争の歴史を反省すべきとの声明を出している。またカトリック教団としては、慰安婦問題でも、靖国参拝問題でも、日本政府を非難しているし、カトリック系の学校に対して、日の丸・君が代を使用しないように要望している。日本カトリックの最高幹部が、左翼であるはずがない。その一方で、西欧カトリック教徒が世界侵略の過程で、さんざん犯した残虐行為を、同じカトリックとして反省しているとは、聞いたことがない。偽善の極みである。
つまり、偽善とは偽りの善ということだから、自分が善良な人間であること、良心的な人間であることを、装うことである。それによって精神的満足、精神的優越感を味わいたいのである。その意味で、偽善は精神の麻薬と言える。いったんそれに味を占めてしまったら、そこから抜け出すことは極めて困難である。
- Comments (Close): 0
- TrackBack (Close): 0
Home > 月刊日本 Archive